「異性として見れない」それが、彼をふった理由だ。他に理由を考えても、最終的にはこの理由に落ち着いてしまう。

卒業式を迎え、気の合う彼と入試の結果が出たら報告し合うと約束

私と彼が付き合ったのは高校を卒業し、大学入試の結果が出た頃。彼とは高校3年生で初めて同じクラスになって、クラスでの席は前後に。だんだんと話すようになって、気が合う部分や話していて落ち着く瞬間が増えていった。うどんが好きなこと、日本史が得意なこと。

卒業式が近づくにつれて、私はさみしくなってきた。このままだと大学は離れ離れだし、もう話すこともなくなっちゃうのかな。彼は頭が良く、私よりも上のランクの大学を目指していた。
お互いに自転車通学だった私たちは、高校の帰りに一緒に帰ることが数回あった。そのときはなんだか甘酸っぱくて、ふわふわした気持ちだったことを覚えている。

そんなこんなで卒業式を迎えた。結局最後まで気持ちを伝えることなく終わってしまった。でもそのかわり、「入試の結果が出たら報告し合う」という約束をした。繋がりができたと感じた私はとても嬉しかった。

そして入試結果が出た。二人とも第一志望に落ちてしまった。そのことを、ようやく追加したLINEで報告し合う。そのつもりだったけど、「会わないか」とのお誘いが来た。ずっと言ってほしかった言葉をもらった私は舞い上がり、考える間もなく返事をした。

大学生活に馴染めなかったけど、彼がいれば他のものはいらなかった

この呼び出されたときに、私たちは付き合い始めた。違う大学に進むけれど、通学する電車は同じだった。同じ電車で通学する日々がはじまった。
大学での生活は全てが新しくて、友達なんて全然できなかった。オリエンテーションで隣になった子と少し話たりはしたけど、あまり馴染めなかった。でも私は気にしなかった。

彼がいたから。彼と大学の行き帰りの時間を過ごし、とても満たされていた。私はどんどん彼に依存し、彼なしでは自分の意志を持てないまでになった。彼以外の全てがどうでもよかった。彼がいてくれたら他のものはいらなかった。

実家通いだった私たちは、夜を過ごす場所がなかった。ホテルに行けば良かったのかもしれないが、お金もないし、思いつかなかったのかもしれない。大学1年生の夏休み、私たちは初めて旅行に行き、夜を過ごした。二人とも初めてで、もどかしげに体を重ねたのを覚えている。痛みがあって、泣き叫んでいた私だけれど、それ以上に彼と一つになれたことが嬉しくて仕方なかった。「女」になった気がした。でも、この時を境に私は彼への見方が変わっていった。

二人の熱に隔たりが生まれ耐えきれなくなった頃、別の男性と出会った

夏休みや冬休み、春休みと休みごとに私たちは旅行をして、そのたびに体を繋げ合った。私はそのたびに、行為を行うことへの不快感が募っていった。行為はいつも苦痛を伴い、満足感を得たことは一度もなかった。
二人の間の熱には隔たりがあって、私は虚ろに体を横たえることしかできなかった。次こそは大丈夫、そう思ってはいたけれど、改善することはなかった。彼の、私への熱量は増えていって更に耐えきれなくなったころ、私は大学で別の男性と知り合った。

その男性と話すととても落ち着いて好意を持つ一方で、彼への気持ちは更にさめていった。彼のことを男性として、異性として見ることができなくなっていた私は付き合っている状態が嫌になっていたのだ。

別れることを決めた私は、タイミングを見て彼に切り出した。答えはNO。すぐには別れてくれないだろうと覚悟はしていた。別れを切り出した日から約2週間後、ようやく別れることになった。
ふった理由は、前述の通りだ。別れずに済む選択肢はあったのだろうか。でも、異性として見れない以上、付き合い続けるのは苦しいだけだった。