中学最後の春。
クラス替えをして間もない最初の英語の授業で、席を移動しながら隣の人と自己紹介をすることになった。
すでに知っている人とのやり取りが続いたので、お互い笑い合いながら軽く流した。
そして。
君の番が来た。
顔と名前は知っていたけれど話したことはなく、どんな人か分からなかった。
私が一通り自己紹介をしたあと、君は、好きな色は、と英語で聞いた。
私は水色が好きなので「Skyblue」と答えた。
すると君は窓を背にしてこう返した。
雲一つない青空に照る太陽のような笑顔で。
「この空みたいな?」
その時ただの水色と捉えていた空の色にたくさんの色が混ざるような感覚を覚えた。
一陣の光が胸に差し込んだ。
それからというもの、君をどうしても目で追ってしまった。
たまにからかわれるのも何だか嬉しくて。
いつしか恋をしてることに気がついた。
認めたくなかったけれど。
勇気を出して告白。恋愛感情がないならそう言ってほしかった
ずっと勇気が出なくて、告白をしたのは3月の終わり。
そうなんだ、と一言だけだったから、きっとそういう風には見てなかったんだろうなと気が付く。
でも悲しい気持ちは一切なくて、その時はただ爽やかな感情だけが残っていた。
とは言いつつ、それから数年間引きずったのだけれど。自分でも引くほど引きずった。
周りから散々仲の良さでからかわれてきたから、ちょっと自惚れていたところもあったのかもね。
恋愛感情がなかったなら、きっぱりとそう言って欲しかったんだと思う。
仲の良さゆえに断ることに躊躇いがあったのかな。
今でもその時の君の感情は分からない。
高校のときに入った合唱部では、いつも君を思いながら歌っていた。
君に届いて欲しいと思いながら。
合唱は大袈裟なくらいの顔の表情が大切だと教わったけれど、切ない表情も嬉しい表情も上手いね、と先輩から褒められた。
君のおかげ。
切ない表情を褒められるのはちょっと複雑だったけれど。
初めて出来た彼氏。でも君が記憶の片隅から消えてくれなくて
そして大学生になって初めて彼氏が出来た。
でもまだ何となく君が記憶の片隅からは消えてくれなくて、ちょっと苦しい思いもした。
夢に見ることもしばしばあった。
似た背丈の人がいれば胸が締め付けられた。
ふと機会があって数年ぶりにメッセージのやり取りをしたら、当時と変わらないノリで話をしてくれた。
そして私もやっと気がついた。
「この人のこと、ちゃんと友達としての好きに変わってた」
と。
それからはちゃんと彼氏のことを自信を持って好きだと言えるようになったし、君のことで切ない夢を見ることもなくなった。
彼氏がいるのに過去に好きだった人が忘れられない…という悩みは誰にも打ち明けることが出来なくて、ずっと一人苦しんでいた。
君を好きだったことを自分にとっての呪いにしたくなくて無理やり封じ込めようとしたけど、思い出として向き合えばよかったんだね。
今は近くも遠い空の下で働いている君。
空の色を教えてくれた君。
君を好きだった時間を呪いそうになった時期もあったけれど、好きでよかったと心から思います。
どうか君が幸せな人生を送れますようにと願っています。