「はなちゃんって、ぶりっ子だよね~」
ぶりっ子という言葉を知ったのは、小学校6年生の頃だった。小6の私は、身長が低く、算数と体育が全くできなくて、給食を食べるのが遅く、どんくさかった。落ち込むよりはニコニコしているほうがいいと思ったから、いつもニコニコしていたら、クラスメイトの女子たちから「ぶりっ子」だと言われた。
ぶりっ子の意味を知って、なんだか恥ずかしくて、小さい声で「そんなことないよ」と言っていた。
女子は心にもないことを言える生き物で、「かわいい」は信用ならない
本当にぶりっ子なんてしてるつもりなかったし、嫌だった。唯一嬉しかったのは、運動も勉強もできる男子が、「こいつはちげーよ」とかばってくれたことだった。その男子と話す機会が増え、小学生ながらに「これが、恋……?」と思っていた矢先、学校に持ってきたはずの私の体操服がなくなった。
不思議に思って探していたら、担任の先生が、青ざめた顔で私の名前を呼んできたのを今でも覚えている。私の体操服が、女子トイレの便器の中に押し込まれていた。
それだけでも衝撃的だが、もっと衝撃的だったのが、クラスメイトの女子が全員「はなちゃん、大丈夫?」と言ってきたこと。この中に犯人いるはずなのに。女子怖すぎでしょ……。小6の私の背筋は凍った。本当にゾクゾクした。
そこから私は、同じ出身の小学校の人がいない、私立の中高一貫校に進学した。校則はないに等しいくらい自由だったけど、化粧もせず、ピアスも開けず、地味に過ごしていた。「はなも化粧とかすればいいのに。絶対かわいいよ~」とクラスメイトの女子に言われても、頑なに拒否していた。
女子は、心にもないことを言えちゃう生き物なのだ。女子の「かわいい」は信用ならない。本当は、化粧もピアスも興味があったけど…。そうして、中高時代の6年間が過ぎていった。今思うと、青春を無駄遣いしたかもしれない。
化粧をして、自分を「かわいくしようと努力すること」は罪なのか?
大学時代、心から親友と呼べる女子に出会った。その子から化粧を教わった。合コンに行ったり、彼氏もできたり、サークルのみんなと旅行に行ったり…。誰も私のことを「ぶりっ子」と呼ぶ人はいなかった。楽しい大学時代だった。もう大丈夫だ。
そうして、社会人になった。「桃乃さんってぶりっ子だよね~。絶対自分のことかわいいと思ってるでしょ」と、同僚に言われた。久しぶりにぶりっ子という言葉を聞いた。私は深く傷つき……なんてことはなかった。
「この人、自分に自信がないから、私のこと『ぶりっ子』って言うんだろうな」と冷静に思ったのである。そして、私は「はい。私、かわいいです」と言った。同僚は、あっけにとられていた。
身長が低い。どんくさい。笑顔でいる。それがぶりっ子なのだとしたら、私はぶりっ子だ。でも、それで誰かを傷つけたり、迷惑かけたりしているのだろうか。化粧をして、自分をかわいくしようと努力することは、罪なのか? 何も悪い事なんてしていない。私は堂々としていればいい。
他人にぶりっ子と思われようが、私の素を受け入れてくれた友人がいる
アイプチより、アイテープのほうが好きだ。二重をばっちり作って、ビューラーはうまく使いこなせないから、ビューラーは使わず、マスカラでまつげを気持ち上向きにして、ナチュラルでかわいい私が完成したら、出勤!
「かわいいよね~」と言われれば「ありがとうございます」と満面の笑みで答える。社会人になって知り合った人に、どう思われてもいい。ぶりっ子だとか、あざとい奴だと思われようが、仕事をきちんとやる人だと思ってもらえればいい。
私には大学時代を共に過ごし、私の素を受け入れてくれた友人たちがいる。私は大丈夫だ。社会人6年目に突入する私は、今日も私らしく、ニコニコ笑顔で仕事をする。