学生時代「着ること」だけだった制服のルール。髪の色や髪形も特に規則はなかった

あたしの記憶の中で、最も印象的なルールとの出会いは小学校中学校の制服だ。
あたしの通っていた学校は、住んでいた家からどちらも歩いて15分ぐらいの場所にあった。そのどちらの学校も白いブラウスにプリーツの入った紺のスカート。学校のルールはその服を着ることだけだった。靴や靴下の規定はなく、髪の毛の色や髪形も特に規則はなかった。
だから、人によってはビーチサンダルや髪の毛がぐしゃぐしゃのままでくる生徒もいたが、やっぱりそれは同級生達から家の経済状態のことまで言われる原因になりかねないので、私も私の友人も学校に行く前に自分でアイロンをかけ、白い靴下を用意して親類に革靴を借りて学校に向かうのだ。玄関のドアを開け、カバンや靴の汚れをタオルで拭って。
そう、私はマニラのスラム街バゴンバリオで生まれ育った。
このエリアはルールがとても少ない街だ。「地球の歩き方」にもモノの値段は買う人によってまちまちであるから、旅行者には高く売りつける場合が多いと書かれているように、少しばかりお金持ちなら高く売ってもいいよね、そんな考えの人が多い。
一方、お金がなく困っている人にはタダであげてしまったりする。
今思い返してみると、私の町の街の人々はルールは自分が決めている人が多いのだろうとおもう。守るべきルールが少ないこともあるのかもしれないが……。
あたしはそんな場所で生きてきたので、ルールを破るということも、破ろうと思ったことはあまりなかった。私たちの地域は、極度の貧困の中で生きてきたので、周りの人たちに何とか合わせていくことで精いっぱいであった。そういう家庭がほとんどなので、クラスのほとんどが自分でアイロンをかけて登校していたのだ。
“あのルールを破れたら”、そう思ったことが1度だけある。
それは日本に来て数年してお金もたまり、夢であるフランスの花の都パリにいこうとした時のことだ。
EUの国々はアジア人のビザをなかなか発行しない。たとえそれがツーリスト、旅行のためのビザであってもだ。
二度ほどフランス大使館にいったところ、とっても冷たい対応をされ、ビザは取得できなかった。ネットの情報によると、日本のフランス大使館は特にビザを発行しなくて有名だという。この時ほどルールを破りたいと思ったことはない。私は数年後日本に帰化し、パリへ行くことができた。
破ることができないルールのほうが多く、それでも実現したい夢があるならルールを破るより避ける方法のほうが絶対にいいとあたしは思う。
あと、破る必要のないルールは破らなくてもいいと思う。それが無意味なものであればあるほど。
だって人生はとても短いと思うから、そのエネルギーを違うことに向けたほうがいいと思う。そう、マイルールはルールとなるべく戦わないこと。みんなにもこのルールをお勧めしたい。ルールを破れたら、がテーマなのに、ルールを守るお勧めで締めてしまうのもちょっと変なのだけど。
かがみよかがみは「私は変わらない、社会を変える」をコンセプトにしたエッセイ投稿メディアです。
「私」が持つ違和感を持ち寄り、社会を変えるムーブメントをつくっていくことが目標です。
恋愛やキャリアなど個人的な経験と、Metooやジェンダーなどの社会的関心が混ざり合ったエッセイやコラム、インタビューを配信しています。