"アルバイト禁止"
私は私立の女子校に通っていて、県内でも有名な校則の厳しい学校だった。
髪型、スカート丈、あらゆる持ち物、目につくもの殆どが厳しいルールに阻まれていた。
勿論、学校帰りの寄り道なんてもってのほかで、アルバイトなど許されるはずもない。  

両親の反対は予想通り。それでも、意欲と覚悟をめげずに伝え続けた

そんな学校に通う私がアルバイトを始めたのは高校2年生になりたての16歳。
決して裕福ではない家庭で、2歳上の姉と一緒に、私立の学校に通わせてもらっていた私は親にお小遣いを願えるはずもなく、
『自分の欲しいものは自分で働いたお金で買おう』
そう思ってアルバイトを探した。

元々、将来は飲食の仕事をしたいと思っていた私。
でも、極度の人見知りだった。
それを克服するために、テーマレストランと呼ばれる普通よりもコミュニケーション能力が必要なお店を受けようとしていた。
初めてのアルバイトで、300席以上ある、スタッフはみんなフレンドリーな人気店。

お母さんとお父さんは、やっぱり反対だった。
1番は、校則に反すること。
そして勉強や課題との両立、そんなところで貴方ができるの?と次々に不安が出てくる。
両親の反対は予想通りだ。

それでも、やりたい意欲と覚悟をめげずに伝え続けた。
最初に折れたのはお母さんだった。
『お小遣いあげられない私たちが、阻む権利はないわ』とお父さんにはお母さんが話をつけてくれた。

学校なんて比較にならないくらい、たくさんの仲間と思い出ができた

・絶対、誰にも、仲良い友達にも言わないこと
・勉強と両立すること
・すぐ辞めないこと
この最低3点の約束を両親と交わした。

『たとえアルバイトであろうが、あなたが16歳だろうが、お客様からしたら関係ない。プロとしてお金をいただく仕事をする自覚を持ってください』
初日に社員さんから言われた言葉。
私のトレーナーについてくれた方はこう言った。
『ここで一回働けば、どこに行っても働けるよ』

16歳の私には重みも、意味もよくわからなかった。
でも、飲食の仕事に就いて育成の立場に立った今、この言葉の意味がとてもわかる。
思えば、かなり体育会系で厳しい職場だったし、スタッフが泣いていることなんてしょっちゅうあった。
きっと、他の緩いところを知っていて、ここが初めてじゃなかったら辞めていたんだろうと思う。
でも、100人弱いるスタッフみんなそこで働くことが大好きで、一緒に働くお互いを尊敬していたから、辛くてもみんなで乗り越えて行けた。

同世代も年々増えていき、一緒に旅行へ行ったり、イベント毎にパーティーをしたり、男女の友情があり得ないなんてことがあり得ないくらい。
『おじいちゃんおばあちゃんになっても会いたいね~!』なんて話す仲間もできた。

厳しい校則の女子校で過ごしていた私にとってアルバイト先は青春そのもの。
最終日を迎える頃には学校のクラスメイトなんて比較にならないくらい、本当にたくさんの仲間と思い出ができたのだ。

学校卒業まで無事見つからず、トップクラスの成績も落とさなかった

結果、約4年間続けたこのアルバイト。
学校卒業まで無事見つかることはなく、元々学年でトップクラスだった成績も落とさなかった。

"アルバイト禁止"のルールを破った私だが、破ったからこそ得られたものは、計り知れない。
もちろん、"ルールを破る"ということは"悪い"ことなのは重々承知。
でも、心の底から守らなくて良かった。
思春期という敏感な時期に幅広い世代と、お互いプロとして"仕事"を共にする。この経験は禁止のルールを守った人々にはもう二度とできることはないからだ。

自分の可能性を潰してしまうルールなんて気にすることない。
でも、破って周りの人に迷惑をかけてしまうような技量なら話は変わってくる。
ルールを破る時、自分の中に決めたルールは絶対に破ってはいけないと思う。