みなさん自分の呼び名は好きですか?私の「いくら」というのはもちろんペンネームだ。自分の名前が嫌いという訳ではないが、コンプレックスをテーマにエッセイを書くというこの場所の性質上、ペンネームがあった方が平和かなと思って付けた。

ペンネームを考えているとき、妊娠中は控えましょうと言われている「いくら」が無性に食べたかった(goto回転寿司で実は一皿食べたけど)というのと、「いくらにしとけば、ちゃん付けで呼んでもらえるかも」という、後付けの希望的観測もあった(本家いくらちゃんはそんなに腹黒くないだろうけど)。

母、学生時代、ママ友と続くちょっと特異な「さん付け」されがち人生

私は普通とは異なるシチュエーションで「さん付け」されがちな人生だった。
まず初めに私を「さん付け」で呼んだのは、まさかの母である。血は繋がっているし、一緒に住んでいたし、不仲というわけではない。むしろ仲は良かった。しかし、母が私の事を「ちゃん付け」で呼んでいた記憶は私にはない。母にもない。おそらく小学校高学年の頃には、もう「さん付け」になっていたんだと思う。未だにそう。理由は不明。珍しいことをされていると気付いたのも大分後になってからだった。

次に私を「さん付け」で呼んだのは大学の知人。私は当時勉強が楽しくて、サークルや学内でのコミュニティには全く関わらなかった。にも関わらず、膨大な数の講義に出席し、他学科のものも受講。学生課主催のボランティアに参加したり、とにかく発表しまくる。そんな私は、友達はゼミ以外では片手ほどしかいない、それなのに謎にどこにでも現れる、ハーマイオニーみたいな女になっていた(逆転時計が欲しい学生生活だった)。
結果、一目置かれると同時に距離も置かれ、名字に「さん付け」で呼ばれることとなったのだった。

ちなみに、ゼミの仲間が「ちゃん付けで呼んでいい?」とゼミの時間中にみんなの前で言ってくれたのは、4回生になってからだった。その時「嬉しい~」と言ったら、「切り替えるタイミングなくて(笑)」言われ、他のみんなにも微笑まれた。話を聞くと、「しっかりしてるから年上だと思ってた」という声まで飛び出してきて笑えた。むしろこちらこそタイミングを提供できずにかたじけない。

最後に、現在進行形で私を「さん付け」で呼んでいるのは、幼稚園の親しいママ友。他のママ友グループが早々にあだ名で呼び合っているのを横目に、私と仲良くしてくれているママ友は私の事を、下の名前に「さん付け」、もしくは息子の名前にママを付けて「◯◯君ママ」と呼ぶ。私もそうしている。
子どもが卒園したら、あだ名で呼び合うのも楽しそうだな~とは思う。でも、今はこの距離感が心地いい。結果として私と同じように感じているママとは特に、良い仲が続いているんだと思う。非常にありがたい。

あだ名を禁止にしているのは、敷地内での切り替えを意識させるため

では「さん付け」しないその他の人々は私を何と呼ぶか。下の名前から引っ張ってきてできたあだ名か、もしくは呼び捨て。
旦那には私から頼んで、産後もあだ名で呼んでもらっている。そうしないと母親扱いされそうだった。女として見続けて欲しいという思いでオーダーした。

そんな私だが、「さん付け」されがちだった人生を悪いとは思っていない。むしろ、面白がっている。

小学校でのあだ名禁止がニュースで取り上げられているが、私の小学生時代を思い返すと、確かにそこにはメリットもある気がする。
先生対子どもの間だけではあるものの、子ども全員を男女変わらず「さん付け」するベテランの先生がいた。その先生は指導力もずば抜けていたし、保護者にも子どもにも愛されていた。
他の先生は大抵女子が「さん付け」、男子は「くん付け」だった。ひねくれ者の私は『それなら女子は「ちゃん」にした方が「くん」と対等なんじゃないの?』とも思っていた。目立つ子だけがたまにあだ名で呼ばれるのも、正直好きではなかった。

今息子が通う幼稚園には、幼稚園の中ではお友達を「◯◯くん」「◯◯ちゃん」と呼ぶルールがある。もちろん園を出てからは自由なあだ名で呼びあってもいい。そこには、園の中では先生のお話を聞いて、園のルールを守って過ごすという、切り替えを意識させる意図かあるのだと思う。
きっと、あだ名禁止ルールがある小学校も、同じ意図があってのことだろう。子ども達が学校の敷地内にいる限りは男女の区別をつけず「◯◯さん」と呼び合う、いいではないか。一定の効果はあると思う。
重要なのは教師側が差別しないことと、子ども達が切り替えをすることだから。

「さん付け」で呼ばれる経験が多い私は、あだ名禁止推奨派

では学校の敷地外は?悪口をあだ名で言うこともあるかもしれない。しかしそれは学校の管轄外だ。親が指導すればいい。以上。

色んな人から「さん付け」で呼ばれてきた私が言うから間違いないだろうけど、あだ名禁止はデメリットないと思いますよ。しかも先生も友達みんなもそうしているなら、変だとか、寂しいとか、そんなことにもは気付かずにいられたはずだった。こんな風にニュースとして取り上げられるまでは。

最後に、私は中学生の時にクラスメイトから「◯◯ちゃん、みんなにモミーって呼ばれてるよ。もみあげ伸ばしてるから」と言われた経験がある。「もみあげじゃなくて触覚な」、と今なら言えるが、その時私は悲しむ前に思った。みんなって誰?と。少なくとも私は卒業まで、その子以外が私をモミーと呼んでいるのは聞いたことがないし、この事を誰かに相談したこともない。とはいえ、嫌な気持ちにはなったので、その子とは疎遠になった。

私はあだ名禁止推奨派だが、もしもあだ名がオーダー制になれば、休み時間なら使ってもいいかもなぁとも思う。そうすれば「ちゃん付け」で呼ばれまくる人生もあったのかもしれない。
……いや、やっぱ「さん付け」でいいや。なんか面白いから。