雨の校庭に響く、地球最後の日であるかのような雄叫び

「雨だあっーーー!!!」
「校舎に戻れぇーー!!」
雨が降ると、まるで緊急事態であるかのように先生が雄叫びをあげ、体育祭の長的な人たちが雄叫びをあげ、その空間は地球最後の日であるかのようだ。高校時代、体育祭練習中に雨が降ると、決まってこの光景を目にすることになる。

なんというか、たかが雨じゃないか……と。そんな胸を叩くゴリラみたいにウホウホしなくても「雨が降り出したので、教室に戻りましょう」と一言言われれば分かる話なのだが、「雨だあっーーー!!!」「走れぇーーーっ!!!」とか。
いや、走らんで良いやん。ってツッコミたくなりながらも、高校時代の私達は雨の日の異様な雰囲気に流されながら日常を送っていたなぁとふと思い出した。

靴箱の通路に立って怒られた思い出。「ここ臭いなー」

“雨の日の学校”というと靴箱の臭いを思い出す。この世のものとは思えないというべきか、はたまたこの世ならではの臭いというべきか……兎にも角にもくさかった。
私がまだ高校に入学したばかりの頃、学校に行った時と帰る時、学校の玄関には腕組みをした先生が靴箱と靴箱の通路ごとに立っていて、私達が何か粗相をするたびに呼び止めて怒るという悪しき習慣があった。

引き止められる理由というのも、取るに足らないものがほとんどで、やれ靴のまま簀の上に上がっただの、登校時間が遅いだの、重箱の隅を突くかの如く私達の粗相を発見し、長々と怒っていた。

ある日、私もその餌食となった。簀が汚かったので「まあ今日ぐらいいいだろう」と靴のまま簀に上がったところを捕らえられたのだ。
その先生はまあまあ髪の長い女性で、背がわりと高くて、頬が少し痩けてエラが張っていて、めちゃくちゃ偏見だけど自分の気の強さのために彼氏(いたかどうか分からないけど)と上手くいっていないのではないか、そして、その鬱憤を晴らす矛先を探すことを目的としてここに立ち、生徒のちょっとしたルール違反を見つけ、感情的になることでストレス発散しているのではないか?
(当時はそんな余裕なかった気がするけど)「ここ臭いなー」と思いながらその先生の話を大人しくかつ、声のトーンを上げて返事をして耐え忍んだ思い出がある。

雨の日というのは私を女優にする

自分で言うのもなんだが、私は学校の中でも比較的落ち着いた生徒だったし、校則もちゃんと守っていたし、そんなに怒られなくてもちゃんと話してもらえれば分かるのに、「コイツは悪者だ!」と決めつけるような怒られ方をしたのは心外だった。

だけどまぁ、私は雨の日は好きだ。高校はあんまり好きじゃなかったけど。
よく映画とかドラマのワンシーンで雨に打たれてぐしゃぐしゃになりながらも頑張る主人公が描かれることがあるけど、私もあれに憧れて、学校の帰り道に傘を下ろし、雨に打たれた思い出もある。
ちなみに一人で。「制服が乾きませんでしたので」という理由をつけて学校を休めないだろうかとか「風邪ひけるんじゃないか」とか阿呆なアイデアを思いつくのは得意だった。雨の日というのは私を女優にする。

私の雨の日の思い出はそんなかんじ。
これからも雨が降るたび、いろんな感情に出会えるのかな。