かがみよかがみでは、「地元に想うこと」をテーマにエッセイを募集しました。たくさんのご応募の中から、編集部が一番心に響いたエッセイを「かがみすと賞」として選ばせていただきました。

今回は、かがみすと賞1本、編集部選として2本のエッセイをご紹介いたします。

◆かがみすと賞

私を支えてくれているのに…自分の劣等感を「田舎」のせいにしていた(cocon)

都会に憧れ、早く地元から離れたいと願った中高時代から、実際に東京で暮らす今。心情の変化を上手に綴ったエッセイだと感じました。冒頭の情景描写にも一気に惹きこまれました。

人口3,000人弱のコンビニなし、人の会話より聞こえる蛙の合唱、最大2両の電車が1日に指を折って数えるほどの本数しか止まらない、小さな町。田舎といわれるには十分すぎる要素を持ち合わせたこの町で生まれ育ったことは、思春期の私にとって劣等感のかたまりだった。

エッセイ後半にかけて、「田舎」に対する視線や思いが移り変わる描写がとても素敵でした。地元で暮らしていたあの頃と地続きにいる、東京の自分。爽やかな読後感も印象的なエッセイでした。

◆編集部選

東京出身の私は、「かえる場所」がある友人たちが羨ましかった(Moët)

東京で生まれ、小学校も中高も、住んでいる場所とは離れた学校へ通ったというMoëtさん。長期休みに地方の実家へ帰省する大学の友人とは対照的に、自分には「かえる場所」がない、というモヤモヤが丁寧に言語化されているエッセイです。

それでも、わたしはやっぱり東京が大好きだ。田舎のようなあたたかさはないし、街ゆく人々はどこかよそよそしいけれど、落ち着く場所がたくさんある。そして何より、街の節々に、自分の人生の記憶が染みついている。

東京で生まれ育ったことを受け入れていくMoëtさんの言葉に、特に東京出身の読者の方からは共感の声が多く寄せられました。温かく前向きな読後感も素敵なエッセイです。

◆地元で、否定と偽りを強いられた。上京で、自分が帰る場所を見つけた(とうめいにんげんさん。)

地元は「自分を否定される場所であり、自分を偽って過ごしてきた場所」だったと綴る、とうめいにんげんさん。地元で過ごしていた当時のの苦しかった経験や、上京後の心情の変化が丁寧に掘り下げられています。

上京してからの毎日は、自分を知っている人がいない状況だからか、全てから解放されたように自分らしく生きられている。本当の自分というものを見つけられている。

生まれ育った地元が必ずしも自分の帰る場所ではない。いつでも、どこでも、「帰る場所」は自分自身で決めることができる。率直で力強い文章に、胸を打たれたエッセイでした。

以上、「地元に想うこと」のかがみすと賞、編集部選の発表でした!たくさんの素敵なご投稿を、本当にありがとうございました。現在募集中のテーマはこちらから。みなさまからのご投稿、お待ちしております!

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