2017年の夏。25歳だった私は、47箇所もの公園を訪れた。それも単身ではない。2歳の長男をベビーカーに乗せて、1歳の次男を抱っこ紐に入れて、だ。
ちなみに我が家には、車も自転車もない。そのため公園までの移動手段は、基本的に電車と徒歩。
……たとえ例年と比べて涼しい夏だったとはいえ。どう考えても47箇所は、やりすぎだ。過去の自分にドン引きの案件である。

しかしその、「毎日1つ以上、初めての公園に行く」というひと夏の試みは、私たち家族にとって忘れられない挑戦となった。

わが子の人生始めての宿題は、わが人生初めての親の宿題になった

きっかけは、長男が通う幼稚園から配布されたプリントだった。そこには『夏休みのお約束表を持ち帰っています。毎週親子でお約束を決めて、守れた日はシールを貼りましょう』と記載されていた。
…なるほどなるほど。それは我が子にとって人生初めての「宿題」であった。

加えてそのプリントには、こんな一文も添えられていた。『お約束表の裏面には、思い出の写真を貼り、エピソードを記入してください』。
…な、なるほどなるほど。それは私にとって人生初めての「親の宿題」であった。……どうしたものか。

約40日間を行き当たりばったりに過ごしていたら、お約束表の裏面は埋まらないかもしれない。私は何かしら方針を決めようと思った。
できれば私自身も楽しみながら、夏の間継続してできること。また、私だけではなく旦那や家族も含めて、みんなが参加できることはないだろうか。

そうして考えて思い付いたのが、「毎日1つ以上、初めての公園に行く」という試みだったのだ。

毎日公園を巡っていると、エリアによって差があることに気付いた

夏休みの間はほぼ毎日、ネットやママ友、家族からの情報を頼りに、公園を巡った。当時私が公園を選ぶ際に気にした観点は、以下のことだ。

  • 子どもの筋力トレーニングになる、安全な複合遊具が設置されていること
  • 遊具を使わない遊びもできること(かくれんぼや水遊び、虫取り等)
  • お昼ごはんを挟んで、長時間過ごせること(トイレやベンチがあり、清掃されている。蚊や毛虫がいない)
  • 他の公園やお出かけスポットと近く、ツアーを組めること

もちろん、これら全てを満たす100点満点の公園は、中々なかった。それでも毎日、色んな公園に訪れていると、子どもの出来ることは日々増えていき、体力もついた。そのうち私たち家族は、明日行く初めての公園を、毎晩楽しみするようになった。

また大人の視点からも、公園巡りには気付きがあった。公園の良し悪しには、エリアによって差があったのだ。
雑草の生い茂る公園の近くにあったのは、やはり手入れの行き届いていない公園だった。子どもが大喜びする公園の近くには、同様の公園が当たり前のようにあった。

私の住む地域が、こんなに様々な状況の公園を抱えているなんて、思いもよらなかった。私は、子どもの宿題をきっかけに公園巡りをしていたのだけれど、実は同時に、自身が住む地域をひと夏でまんべんなく巡っていた。そして、私たち家族は毎日、これまで知らなかった近所の新しい景色を、見ていたのである。

当たり前にそこにある公園が、実はそうではないことに気付いた

家から数駅先にあった、とある公園。そこで私は、石碑を見つけた。石碑には『阪神・淡路大震災からの復興の都市計画によって生まれた』という、この公園の成り立ちが記されていた。私はその1文を見て、思わず立ち止まった。

読み進めると、『震災の2か月後にはこの土地を公園とする案が出たが、住民が去り公園となるまで、14年の歳月がかかった』ということが分かった。
また、公園に設置された看板からは、現在ここが災害時の避難所に指定されているということも分かった。

公園という場所は、近隣住民の健康的な生活のために作られる。当たり前にそこにあるようだが、実はそうではない。
公園を作ることや、その設備を維持すること。それは、誰かの願い無くしてはありえないのだ。

私が先にあげた、公園を「良い」と思う4つの観点。これは、小さな子どもを連れた、25歳母の着目点だ。しかし、公園に訪れる目的は、人それぞれ。散歩をしにくる人や、写真を撮りにくる人。より多くの地域住民が考える「良い公園」が、全国に増えるといいなと、私は思う。

季節の花が咲き誇る公園、近くに美味しいパン屋さんがある公園。あなたにとって「良い公園」とは、どのような公園だろうか。コロナ禍の今、近所の知らない公園を、改めて探してみるのもいいかもしれない。

ちなみに、我が家から1番近い公園は、遊具も古いし、砂場も固い。しかし今年の夏も、私はそんなことに文句を言いながら。シャボン玉や水鉄砲を抱えた子ども達と、その公園に足しげく通うことになるのだろう。

そして、その公園に飽きたなら。4年前、お約束表の裏に書き込んだ「47箇所の公園リスト」が、きっと私を助けてくれるのだ。