私は実家暮らしで、地元からまだ一度も離れていない。新卒で勤めた職場も地元だし、
わけあって仕事を辞めてからも、ずっとそのまま住んでいる。

子供の頃から通うお気に入りの公園は、いつも私の心を軽くしてくれる

私の地元でお気に入りの場所は、図書館近くの大きな公園である。図書館に行ったあと、ぶらぶら公園内を歩いて帰るのがいつものパターン。その公園は小さいころからよく利用していて、遊具で遊んだり、桜の季節には家族一緒にお花見をしたりしていた。大人になった今もよく足を運んでいる。

休日は大勢の人でにぎわう。芝生の上にレジャーシートを敷いて寝転がるカップルもいれば、ボール遊びをする親子も。池の近くで楽器を演奏している男性。スポーツウエアを着てランニングしている女性。そして犬の散歩に出かける私。本当にいろんな人たちがいろんな形で公園での素敵な時間を過ごしている。私は散歩しながら、その人たちの様子をぼーっと犬と一緒に眺めるのが楽しかった。

何か気持ちがモヤモヤして、家でどうしようもないときは、とりあえず外に出てみる。犬と一緒に公園に行って足を動かして、木々からの心地よい風を浴びていると、心がすーっとして軽くなることが多かった。こうしたら、いっか。まあ、いっか。公園から帰ると不思議と気持ちが落ち着いている。 

仕事で落ち込んだときも、体調を崩して退職したときも、失恋したときも。何も考えず、ただ公園に来ていた。池ですいすいと優雅に泳ぐアメンボをぼーっと眺めたり、道いっぱいに広がった落ち葉をカシャカシャいわせて歩いたり、木の根元に腰かけてみたりするだけで、心が浄化されている気がした。自然の力ってすごいなと思う。

受け取ったのは卵サンドとたぬきパンと、おばあさんのあったかい笑顔

そんな私だが、一つ気になっていることがあった。公園から少し歩いた踏切の近くにあるパン屋さん。通り道なのでずっと看板が目に入って、どんな店だろうと気になっていた。だが、営業時間が短くてシャッターが閉まっているときも多いし、あまりお客さんが入っているのを見かけないため、なかなか勇気がなくてずっと入れないでいたのだ。

ある日、いつものようにその店の前を通り過ぎたときだった。ふと見ると、珍しく明かりがついていて、パンもたくさん並んでいる。お店の人もいそうな予感。小心者の私からしたら、ちょっとした冒険だ。緊張しながらも、おそるおそる扉を開けると――。

「いらっしゃいませ!」
一人のおばあさんがにこにこしながら出てきた。
「あの公園に行くの? きょうはいい天気だからピクニック日和だよね。サンドイッチがおすすめだよ」
人見知りの私にはありがたく向こうからたくさんしゃべりかけてくれた。
「卵サンド、ください。あとその隣のたぬきパンも」
チョコペンで描かれたたぬきの顔が何ともかわいくて懐かしい感じがした。
顔一つ一つが違って個性あふれている。公園の近くには古墳もあるから、古墳パンなんてものも並べてあった。
「はい、まいどあり。サービスで値段ちょっと引いとくね。楽しんできてね」
おばあさんは、そういってちょっとおまけでパンを値引きしてくれた。

何だかわくわくする。まだ知らない地元の素敵なところを見つけたい

うん、何かこの感じ、いいかも。袋を手にさげて店から出てきた私は、とても気持ちがルンルンだった。都会の駅前のおしゃれなパン屋さんにはない、この感じ。お店の人とのちょっとした会話で人の温かみを感じる。こういうちょっとした会話や雑談が大事なのかも。
公園では、まず卵サンドから食べようかな――。何だかわくわくしてきた。
地元でも、まだまだ知らないところがたくさんある。これからもぶらぶら歩いて、新しい場所を発掘していきたいな。「自然」と「人」にあふれたこのまちで――。