失敗した。失敗した。
絶対に今A君は引いてるよ、送んなきゃよかった。
「ねえ今○○のマックにいる?」16:05
「なんで?」16:10
「いや、今同じマックにいるかもしれなくて…」16:12
「ごめん、いないよ笑」16:45
「じゃあ見間違えたのかな」16:47
「そだね笑」18:08
この後のやり取りは一切ない。
夕立の後。雨がやんで、恋人繋ぎで帰った。すごく幸せだった
高校三年生の夏、私はある男の子に夢中だった。
スポーツ大会実行委員のA君。
背が高くて、昭和の俳優みたいな男臭いハンサムで、声が低めで、しかもサッカー部だった。青春フィルターもかかってもう一目惚れみたいなものだった。
運良く私は席替えでA君と前後で、沢山話して、さりげなくLINEをゲットしたのだ。恋バナもした。彼はその時彼女がいないことを知った私は1人で気が狂ったように踊った。当然私も好きな人の有無を聞かれて、気になる人はいる、と答えるとA君は露骨に探り出した。お互い両思いだろう、でも明言はしないっていうこの時期がいつだって1番楽しい。
実は私はサボり魔で、彼もそうだった。夏の暑さが尾を引いてる頃、お互いサボりながらLINEしていたら彼がじゃ一緒に遊ぼーぜって言うから、私はまた気が狂ったように飛び跳ねてすぐ会いにいった。カラオケをして、妖しい雰囲気にもなったけどその時は何もしなかった。
夕方店を出て帰ろうとすると、彼が懇願するようにもう少し話そ?なんていうから…
気づいたら近場の山でハイキングしていた。
なんでそうなったかは本当にノリでとしかいえない。その時私は彼が可愛いということしか頭になかった。最初は公園で話そうと言われてよくわからないけど山に登っていて、どうせなら登頂しようと2人で頂点に到達した時にはもう日が落ちていた。
遠くに見え始める夜景、こんな場所に人は来なくて、セミが頭がおかしくなる程鳴いていて、当然また妖しい雰囲気になって、彼に気になる人って誰なのと問い詰められて、もう逃げ場がなくて、貴方だと言って、惹かれ合うようにキスをした。暗くなっても蒸し暑くて、回した手に触れたシャツがしっとりしていた。
ほん少しの理性で、甘える彼にもう帰ろ?と言ったが、神様はまだ帰りたくないと渋る彼に味方した。帰ろうとした瞬間に夕立が始まった。雨宿りするしかなかった。同様に、することもほかになかった。
かわいいと頭を撫でられた。
雨がやんで、恋人繋ぎで帰った。幸せだった。すごく幸せだった。
彼を忘れようとしたけど、席替えでずっと意識せざるを得なかった
でも、私は付き合おうとは言われていなかった。別れた帰りの電車で、暫く受験に集中するとLINEが来た。彼の本心が透けて見えた。
段々気まずくなって、LINEも彼の返信が遅くなった。それでも私は彼のタイプがショートだと知って自慢のロングの髪を切った。彼から可愛いとLINEがきて安心したが、その頃、スポーツ大会が近いこともあって彼は同じ委員の女の子と仲良くなり始めていた。インスタで委員の写真をみて、その子の隣で笑ってる彼を見て、その日お風呂でシャワーを浴びながら泣いた。
私からLINEをやめたら、彼からはもう来なくてまた泣いた。
私は彼を忘れようとしたけど、その後の席替えで連続してずっと前後だったから、ずっと彼を意識せざるを得なかった。嬉しいを通り越してもう恐くて、何か人智を越えた存在の意思を感じるくらいだった。前後の連続は卒業まで続いた。彼も怖いだろうなと思って、偶然なんだと弁解したかったけど、でも気まずくて話しかけられなくて、いつだって前後の席なのに距離は開く一方だった。
これ以上好きな人の迷惑になりたくなかったから、諦める以外なかった
暫くして、失恋の傷を新しい恋で治そうとした私は放課後に映画に誘ってくれたC君と遊んでいた。お腹が空いてマックに入ったら、A君がいた。えっなんでこんなところにいるの?しかもこのタイミングで?人生で初めて本心から2度見してしまった。
物凄く焦った。まだA君のことが好きだったから今デートしてるところを見られていたらどうしようと気が気ではなかった。冷静になれなくて、見られていた場合の弁解をしようとして…、
その結果が冒頭のLINEである。彼は店内の私の事を認知していなかったし、私が送ったLINEに既読をつけてからすぐ店を出たようだ。
いやもう、振った女からの久々のLINEがこれだともうストーカーにしか見えない。
明らかに避けられているし私はどうして送ってしまったんだと本当に後悔している。一連の私の顔色を見ていたC君は不思議そうな顔をしていた。C君には申し訳ないがもう楽しめなくてその後勉強を理由に帰った。ごめんC君…
でもその時、薄情だけどC君よりA君に本当に申し訳なかった。
いつも怖かっただろうと思う。でもあのLINEは私がストーカーになった訳じゃないんだよ、必ず前後になる席替えも私の意図じゃないんだ、忙しい受験期に迷惑かけて本当にごめん。
この一件でやっとA君を諦められた。彼が私を避けたことを目の当たりにして、自分が彼の迷惑になっていたことがやっと身をもって実感できたからだ。
なんと言われようが私は彼を好きになってしまった。でもこれ以上好きな人の迷惑にはなりたくなかったから諦める以外なかった。
私はこれからは男の人と付き合う前の線引きを間違えないように心がけようと思うが、まあでもそもそもの男を見る目を養うべきだよなと今強く思っている。