私は外国語大学4年生で、現在休学中だ。
休学を通して、大学入学を機に離れたふるさとに対する印象が変わった。

肯定的な印象を持てなかったふるさと。「何もない」の声も多かった

高校卒業までの18年間暮らしていた中で、私のふるさとである地元に対してあまり肯定的な印象を持つことはなかった。
具体的には、地元には誇れるものが何もなく、漠然と新しいものや煌びやかなものが溢れている都会に憧れていた。周りの人たちも「地元には何もない」というその声には、悲壮感が漂っていた。

また、人気のお店が移転したり、馴染みのお店が閉店したりと目に見えてどんどん過疎化していく地元に対して寂しさを感じていた。私にはなす術もなく無力さも抱えていた。
そんな地元に対する印象が変わったきっかけは、1年半前の新型コロナウイルスの蔓延である。

外国語大学に通っていることもあり、卒業までに海外インターンへ参加する計画していたが、新型コロナウイルスの影響で断念することに。大学へは将来やりたいことを探しにきたが、「在学中に海外へ行く」という一つの目標を失い、自分のやりたいことがわからなくなってしまった。
周囲の就活ムードも相まって、やりたいことがわからない状態で、なんとなく就職したくなかった。

一度外へ出てから見つめた地元には、気付けなかった魅力があった

ある日、大学の友達とお互いの地元について話している中で、「私の地元には、何もないんだよね。でもこんな文化があったりするよ」と地元を紹介していると、友達から「珍しいものたくさんあるね!羨ましいよ」と言われた。

その言葉から私は、先入観で地元には何もないと考えていたが、一度外へ出てから見つめた地元には、私が気づいていない魅力がたくさんあるとわかり、地元についてもっと知りたくなった。地元へ目をむける機会が多くなってる中で、昔から感じていた、過疎化し活気のなくなっていく地元のために何かできたらいいなという想いが湧き上がってきた。

このような経緯から、地元に伝わる文化を取材し、普段は触れることがない魅力を地元の人々に伝える活動をしようと思い立った。私と同じように地元に対して否定的な印象を抱いている人が多く、その人達の印象を少しでも良くすることで、地元がより元気あふれる場所になってほしいからだ。休学という選択肢を取ったのは、地元に拠点を置いた密着型の取材を行うことで、より文化それ自体良く理解し関わる方のお話を深く聞き取ることができると思ったからだ。

取材することで誇らしくなった地元。ふるさとに誇りを持つ大切さ

今年の4月から休学し現在までに、後継者が不足している特産品の生産者、たった一人の地元に伝わる鉈の作り手、江戸時代から親しまれているお茶の製造者に取材を行ってきた。

伝統ある文化のあり方は様々で、地元にとっては世代交代が起こっている時期でもあった。
お話を聞く中で、文化を残していきたいと考える人もいれば、今の世代で幕をおろすと決断した方もいた。普段触れることのない地元の文化を体験し、先人の暮らしや現在それらを継承している方々の想いを知った。

地元の中にいるとあえて文化に目を向ける機会が少ないため、知ることをせず何もないと思っていた自分が恥ずかしくなり、取材後には地元がとても誇らしくなった。
またなくなっていくものだけに目を向けるのではなく、今現在残っているものに目を向け、どのように保存したり関わったりしていくのが良いかを考えることが大切だと気づいた。

この経験を通して、残りの休学期間でより多くの文化に触れつつ、地元の「今」を追いかけていきたい。移り変わる地元を見つめ、元気な状態を保つために私ができることを考えたい。また記事の読者から「地元には、こんなものもあるんだね」と新しく魅力に気づいたという声をいただいたため、地元の魅力を発信し続けていきたい。
今後他の地域の人から地元について聞かれた際には、「私の地元、何もないよ」なんて言わない。進んで魅力を語り、ふるさとに誇りを持って生きていきたい。