私の自慢は大道芸ができることだ。一般的にはただの特技だと思われるが、この特技こそ私の強みなのだ。
大道芸との出会いは、大学生のときに出会ったサークルで、私はそこでバルーンアートを始めた。楽しくて夢中になって、いろいろなものが作れるようになった。動物、花、ステッキ、帽子、キャラクター、服など作れると思ったものは何でもバルーンで作った。
月に数回はボランティアとして様々な施設でバルーンを使ったショーをしていた。子供には大人気だったが、大人の反応は様々で、ときには落ち込むこともあったがとても楽しかった。

今までのショーからは想像できないほどの大規模なイベントに呼ばれた

そんな私が、一度アミューズメント施設でのパフォーマーとして呼ばれることがあった。いつも幼稚園やデイサービス等でショーをしている自分にとっては、想像出来ないほどの大規模イベントだ。
特に違っていたのは、いつものボランティアとは違い、お客さんから投げ銭を頂いてもよいイベントだったのだ。自分の実力がもろに反映されるシステムに不安もあったが、多くの人に見てもらえる楽しみが大きかった。
それまでの準備はとても大変だった。
まずショーの構成を考えなければならない。キャラクターや使える音楽は制限され、なおかつ子供も大人も楽しめる構成にしなければならない。そのために分かりやすいバルーンのカラーチェンジを随所に取り入れ、大柄な作品をたくさん出そうと考えた。
そのために意気込んで行った試作では、逆にカバみたいな顔の変なドラゴンができたこともあった。当時はうまくいかないことに苛立ったが、今となってはそれもいい思い出である。
会場は屋外だったため、当日のコンディションも不安だった。雨だった場合、風が強かった場合、いろいろな状況をイメージしてありとあらゆるものを持参して当日に挑んだ。

お客さんを巻き込み楽しんでもらうため、ショーの内容を急遽変更

迎えた本番は、まさに一喜一憂。一番最初は時間が早かったこともあり、なかなか人が集まらない。音響のトラブルや、強風によるミスも多かった。出だしとしては最悪だった。
それでも、投げ銭をくれる人はいた。かごに入ったお金を見て涙が出そうになった。きっと入れてくれた人は今後の自分に投資してくれたに違いない、そう思えた。ならば落ち込んでいる暇はなく、次にどう生かせるかを早く考えなければ、とも思った。
それからは今から考えてもよく頑張ったと思う。急遽構成を変え、お客さんにプレゼントするバルーンも増やし、なるべく笑顔で、お客さんを巻き込んでのショーに切り替えた。急ごしらえなので失敗することもあったが、それ以上に手応えがあった。
最終的には周りには多くの人だかりと、大きなお金がたくさんかごの中に入った。お客さんを喜ばすことができたのだ。
私のこの経験は、今でも私の糧になっている。

私の本当の自慢は、大道芸ができたことで得られた経験

好きなもので人を惹きつけられたこと、お金を稼げたこと、諦めなかったことがどれだけ自分にとって大きなことだったか。
周りから見ればそんなことかもしれない、でも私にとっては凄いことなのだ。今まで何か大きな成績を収めたわけでもなかったが、この時初めて自分を凄いと思えた。
働いている今、仕事に対しても前向きになった。あの時できたんだから今もできるよ、そう自分に言い聞かせながら、ミスを成功に生かせるよう、ポジティブに毎日を生きている。
あの時から座右の銘は「成せば成る」になった。そんな私の自慢は、大道芸ができることだ。
しかし本当は、大道芸ができたことで得られた経験が、私の自慢なんだろうと思う。