「女性なのにすごいね」
入社3年目で海外駐在した際に、多くの取引先から言われた言葉。
「同じ状況で男性だったら普通なの?なんで、女性だったらすごいの?」
当時の私は「ありがとうございます」と言いながらも、心の中はもやもや。
就職活動中、多くの企業で明らかな男女格差があることも目の当たりにした。「女性は営業には出さないし、出したこともないし、出す予定もない」なんて言われる会社だってあったし、総合職の会社説明会に行けば、稀有な目で見られることもしばしば。
男性と同じことをしているだけなのに、「すごいこと」と捉えられる
だから、性別関係なく活躍のフィールドがある会社を選んで入社し、入社3年目で手にした海外勤務。現地の方々と働く中で、冒頭のような言葉をかけてくるのは、日本人ばかり。
その時に改めて、日本のジェンダーに対する考え方が昔から変わっておらず、世界から遅れているということを実感した。そして、それに気づいていない人たちが大勢いるということも……。
女性だって、バリバリ営業するし、泥臭い仕事だってするし、重い荷物だって持つ。そして、そうできることは何ら特別じゃない、だって仕事ってそういうものでしょ?
男性と同じことをしているだけなのに、「すごいこと」と捉えられるのが、私は、どうしても気に入らない。
なぜなら、そう思うってことは「男性よりもできないはずだ」とその人が思っているからでしょ?
その評価をそのままラッキーと受け取ればいいじゃない、と周りは言うが、達成したい何かに向かって努力することも、営業を始めとする仕事の難しさや嬉しさを感じることも、もちろん汚いものを持つことに対する抵抗感だって、性別なんて関係ないと思っている。わがままかもしれないけれど、ひとりの人として見て欲しいし、評価してほしいのだ、私は。
一度きりの人生を後悔しないため、海外でのインターンシップに参加
そんな私は、昨年10月に新卒から約10年勤めた会社を退職し、海外での有給インターンシップに参加している真っ最中である。
一部上場企業で、福利厚生も充実、産育休の取得率も高く、子育てしながら働く女性も多い。そして、女性を管理職に登用しようとする意識の高い会社。たくさんの素敵な方々に恵まれていて、人間関係だって問題なかった。それなのに、なぜ退職という決断をしたのか。
理由はシンプル。
たった一度きりの人生を後悔しないため、そして今この瞬間を幸せでいるため。
決してこのまま一人で生きていく決断をしたわけじゃない。
ただ、やりたいことがあって、それに挑戦できる環境なのに、それをやらない自分がかっこ悪く思えてしまった。新しい世界に飛び込むことはドキドキするし、怖さだってあるし、後悔したらどうしようって不安もある。でもその先には、飛び込んだからこそ見える景色があることを私が一番知っているのに……。
この慣れた日常を過ごし、会社のレールにのって昇進し、そのうち結婚して、そのうち子供が生まれて。そんな未来は容易に想像できたけれど、想像できたことに自分自身がわくわくを感じられないことに気づいてしまった。
会社に退職の意思を伝えたとき、同年代の仲間たちは次の道を応援してくれた。でも、年上の人たち(男性)はこぞってこう言った。
「もったいない」「結婚はどうするのか」「今の自分の年齢、分かってる?」
女性がこうあるべきと唱える人は、その人にとっての理想を言っている
女性がこうあるべきだと唱える人は、「こうでいてほしい」というその人にとっての理想を言っているのだと私は思う。私たち女性は、そんな人たちの理想をかなえるために存在しているわけではないし、男性や上司、会社や社会にとって都合のいい存在ではない。
私の人生は、私の時間は、私の今は、私のためだけのもの。
様々な言葉を押しのけて、この決断をした私はきっと世間でいう、いわゆる「わきまえない」道へまた大きな一歩を踏み出したのだと、これを書きながら感じている。
でも、後悔なんてしていない。今の私は、私が選んだ幸せなのだから。
これからも私は、今後訪れるであろう多くの選択において、その時の私が心惹かれる方へ人生を進んでいく。たとえそれが「わきまえない」日常になったとしても、堂々と胸を張り、一歩ずつ進んでいく。
そんな日常を送る私が、一番かっこいい!って、自分で思えるから。