◆犬山紙子賞 大賞

「捨てられた女」ではなく、「捨てた女」にしてくれた友達(木ノ実ひよこ)

あらすじ)結婚も考えていた恋人が浮気していた。何がなんでも別れよう。そう決めて連絡した同期の彼女は、すぐに私の家に駆けつけてくれた。「今から彼氏の荷物、全部まとめよう」。写真から歯ブラシまで、彼女は私が清々しい気持ちになるくらい、雑に鞄へぶち込みはじめた。

講評

「捨てた」という言葉は主体的。「捨てられた」は受動的。彼に浮気をされた一人の女性が、同期の女性に励まされ、オセロをひっくり返したように主体的に生きていくようになる。人を頼った先にあるのは良い連鎖である、そんなメッセージが見えてきます。
3年付き合った、結婚も視野にいれていた彼氏に浮気されただなんて聞いただけでもしんどいのに、読んでいる私の心はなぜかスカッとするのです。「彼の荷物をまとめよう」と鞄にぶち込んでゆく友人の描写がとにかく最高。ツーショット写真も歯ブラシも、雑にぶち込んでくれるんですから。

◆次点

黙って運転する祖母の優しさと走行音に守られ、私はいつまでも泣いた(森野まふゆ)

あらすじ)母はあと3カ月で死ぬらしい。連絡を受けて実家に戻った私。降り立った空港には、祖母が迎えにきてくれていた。140センチしかない祖母は、年末に帰省した時よりさらに小さくなっているように思われた。6人乗りのセレナの運転席によじのぼると、祖母は慣れた手つきで車を出した。

◆次点

家族のために目指した東大まで、あと2点だった。でも涙は出なかった(望月なつ)

あらすじ)「私に時間をくれませんか」。2度目の大学受験を終えた日、帰りの新幹線の中で涙を流し、震える手で予備校の先生にメールを打った。兄の死、心身を壊した両親。「私が強くなる。家族を守る」と決意した私は、いままで必死に走り続けていた。しかし、そんな私の心には変化が生まれていた。

以上、犬山紙子賞の発表でした!たくさんの素敵なご投稿を、本当にありがとうございました。現在募集中のテーマはこちらから。みなさまからのご投稿、お待ちしております!