ピンク、それはあまりに女性性を表現するのにふさわしく、いつまでも憧れの色であることから、時に距離感が求められたりもして、お付き合いが大変な色でもある。そしてその距離感は、大人になればなるほど大きくすることが求められる。
私もピンクを愛しすぎるがごとく、距離感の取り方に苦労をした一人の女である。
あだ名はピンクちゃん。そこには「痛いよ」という冷やかしが
好きな色は?と聞かれると、私はプロフィールのように水色と答えている。
けれどもそれは真っ赤な嘘。それは2番目に好きな色で、一番好きな色は生まれてから一度も変わらずピンクだ。
ではなぜそう答えないかというと、今回のテーマの通り、距離感を求められる年齢にさしかかってしまったからだ。
私は元々周囲に流されず、自分を貫くタイプであった。それこそ20歳くらいまでは持ち物の全てがピンクであり、全身ピンクコーデのまま外出することも珍しくなかった。大学構内ではその目立ち様からピンクちゃんというあだ名が付いた。
ピンクの子と言えば通じるくらい、ピンクは私のアイデンティティであった。
しかし、その言葉には「かわいいね、似合うよ」というポジティブな意味ばかりではないことは明白であった。寧ろ「ピンクばかりで痛いよ」という冷やかしの方がずっと大きいことは自覚している。
そんな私のピンクの使い方は、年齢が進むにつれて、かわいいから取り入れるものから、他者から見た自己表現のツールへと化していった。
ピンクとは、どの業界を見ても女性性を表現するツールとして成り立っている。もう何十年も前からあるなんとかレンジャーの女役、一部の女性医療従事者の制服……。洋服や小物入れといった女性物が何色かの展開になっていると、必ずと言っていいほどピンクという選択肢がある。
私はその豊富な展開から、何も考えずにピンクばかりを選択して生きてきた。
大人のおしゃれを始め、色のイメージを考えるようになった
いい加減大人になろうと冷静に考え始めたのは、大学院生になった23歳の頃だった。
院生になると研究発表等で人前に出る機会が増え、それだけ見られる人になる。私はこの年をおしゃれ元年と定め、10キロのダイエットに成功した。
おしゃれの幅が広がったと同時に、今後の色の選び方についても考え始めた。そこで参考にしたのは、各色が与えるイメージについてだ。
青は知的、紫はミステリアス、そしてピンクはかわいらしさ、女性らしさを表すという。今後は大学院生として皆の前で発表する機会が増えるから、洋服に紺や水色を多く取り入れ、知的に見えるよう印象操作を狙った。そしてピンクは傘や小物入れといったちょっとしたアイテムと、数ある洋服の中の複数枚に留めた。
するとどういうことか、今まで童顔のせいか全く似合わなかった青系のきれいめ系の服も、違和感なく着こなせるようになり、私=きっちりとしたきれいな服を着こなす人、というイメージを作り上げることができた。所々取り入れられたピンクは、その希少性から以前にも増してその役割を果たしているように見えた。
また、知的なイメージを持たせるファッションに時々ピンクのボレロやスカートを入れ込むファッションスタイルは、時折女性性を象徴するのに役立っている。
戦略的に取り入れたピンクは、より一層輝いている
今までのようにかわいいという気持ち一筋で求めてきたピンクもかわいらしいが、戦略的に取り入れたピンクは、より一層輝いている。
社会人となった今も、このピンクの使い方の方が好きだ。
ブランドのバックや洋服の色を選ぶとき、どうしてもそのかわいさからピンクに目が行ってしまう。でも今では他のアイテムとのコントラストを考えて敢えて避けるようになった。その方が、よりお上品にさりげなく女性性を表現できることを学んだからだ。
紺色のボレロと黒のロングスカートの上に薄いピンクの日傘を差して
栃木県の某役所での昼休みにて