出会いは痛みを和らげ、ひきこもりをバイトへ向かわせた

8年間停滞していたひきこもりニート生活が、推しに出会ったことでジェットコースターのような人生に変わった。

ひきこもりニートになった原因は、何にもうまくいかず、メンタルを病んで大学を中退して身体を壊したからだ。
毎日ベッドで寝たきりの日々を20代は過ごした。身体中が痛くて動けず、気づけばアラサーだった。
そうやってベットで寝転びながらYouTubeを見まくっていた時に、推しと出会った。

歌って踊って演技もおしゃべりもなんでもできるタレントだ。
とにかく可愛いんです……、うちの推し。
推しを見る度に「うわ、好き!愛してる〜!」と毎回、IQが3になるほど衝撃を食らう。
推しが活躍している姿を見ると痛みが和らいだ。
推しは私にとって最先端医療なのだ。

もっともっと推しを応援したくなり、東京で開催する推しのライブにも行きたくなり、チケット代や交通費や宿泊費にお金がかかるから、働くことにした。
8年間、通ったのは病院だけのひきこもりニートが、重い腰をあげた瞬間だった。

最初は4時間の単発バイトから始めた。
緊張も不安もあって、初日は疲れすぎてたった4時間でも、その日は泥のように眠った。
そんなバイトを週2のペースから始め、ライブに行くためのお小遣いを手に入れて、東京に出向いた。

推しのライブを生で見れて最高だった。また、大学の同期から「東京に来るなら会わない?」と連絡をもらい、8年ぶりの再会も果たすこともできた。
そこから「次のライブも行きたい!」となり、派遣でいろんなバイトを経験した。
バイトはどれもつまらなかった。肉体労働じゃなくても身体はしんどくなる。
推しに出会う前の私だったら耐えられなかっただろう。
ただ「とにかく推しのために稼ぐぞ!」という思いで、バックレることはしなかった。
たまに痛み止めを飲みながら、推しの活動を見ながら、なんとか働くことができた。

そして29歳目前で、ついに地元のイベント会社に就職した!

「推し」とは地元が同じなので、今後「推し」が地元出身タレントとして、イベントでキャスティングされるのではと目論んだ。
そうすればスタッフとして、同じ業界人として、推しといろんなお話ができるなあとワクワクした。
社内でも推しのことを話してみると「あなたの好きな推しを呼べるようにがんばりましょう」と社長にも言われ、嬉しかった。

就職するもクビに。発達障害も発覚。それでも推しは薬のようなもの

業務はかなり忙しかったが、ひきこもりニートからどうにかバイトを頑張っていた私が、遂にキャリアウーマンみたいに働けている!という自信に満ち溢れ、楽しかった。
そして推しに会えるという目標があったのでかなり頑張れた。
だが人間関係に難ありで、結局クビになってしまった。
推しと会えることもなく、嫌なこともたくさん言われた。
大変だけど一生懸命仕事をすることができた瞬間だったから、その環境を奪われるのも悔しかった。転職活動もうまくいっていない。

さらに泣きっ面に蜂、発達障害が発覚した。
ASDスペクトラムとADHDの診断が降りた。
ADHDは障害者手帳の申請をしても良いレベルらしい。

会社をクビになった時、「そういう障害があるのでは?」と指摘を受け、発達障害の専門クリニックに行ってみたらマジで診断が降りた。
検査の中で、幼少期や思春期の人間関係のトラブルも発達障害が原因の1つであることもわかった。
8年間ひきこもりニートになるくらい精神も身体も病んだことも、もしかしたら関係しているかもしれない。
「もっと早く発達障害だとわかれば、ここまでは苦労しなかったのでは!?」と「たられば」が止まらない自分にも嫌気がさした。

あれこれ考えすぎるのは私の個性だと思う。
でもそうやって悩んで、気づいたら身体を壊すまで思い詰めていた過去の自分がいるから要注意だ。

ただ最近は、メンタルが辛くても、その延長で身体を壊すという事態は起こっていない。
先日も感染症対策をしつつ夜行バスで推しのライブに出向いたくらい元気だ。
「こんなに病んで身体壊したら、推しのライブ行けなくなるだろ!」
と、行き過ぎたグルグル思考は一旦止まることができるのだ。
そして推しのライブを生で見て、一気に心が和らいで憂鬱な気持ちはリセットされる。

やっぱり推しは精神面でも即効性のある医療なのかなと思う。
ひきこもりニートのときに毎日両手いっぱいの量だったお薬は、今は夜行バスの時に飲む酔い止め2錠だけだ。

仕事も、生活も、勉強も頑張る。推しが私のパワーの源

ただ身体が健康なだけでは、推しのライブには何度も行くことができない。
たくさん働いてこれからも、そのライブを楽しむためのお金を手に入れなければならない。
今は失業手当というものが出ているが、それももうすぐ終わる。
とにかくお金を稼げるように単発でもなんでも、「しゃーないから、また働こう!」という気になれる。

そして、稼いだお金は全額推しに使うわけじゃない。

生活費はもちろんのこと、今後やりたい仕事に就くための機材や勉強本への投資もしたいと思っている。
失業手当の期間の中で、たくさん自分の興味のある分野を勉強して、自分のやりたい仕事の方向性が定まった。
今も毎日推しの活動を見ながら、勉強に勤しんでいる。
身についてるかわからない不安もあるが、そんな不安は推しを見れば和らぐ。
ちなみに推しのために出向いた東京で久々に会った大学の同期と一緒に、映像やスチールの制作活動も始まった。ひきこもりニートの時には考えられなかったことだ。

ひきこもりニートを8年続けていた時に比べ、金銭面・仕事面という点では置かれた状況はそんなに変わっていないかもしれない。でも身体はずいぶんと健康だし、前向きになれる自分へと変わっていけたことは本当に私の財産だ。

これからもジェットコースターな人生は続くと思うけど、次はもっと自分の理想の姿に変わっていけるように、もっとパワーを蓄えたい。だからこれからも、私を変えた推しのことを全力で応援する。