上の世代に声を大にして言いたいのは、「今時の若者だから、離職率が高いわけではない」ことだ。
私は、現職の新卒入社の1期生である。そのため、新卒入社してきた子達を気にかけている。中でも、若手の早期退職の割合が高い点は、会社全体の課題として捉える必要がある。
私は現在入社7年目だが、その間、同期や後輩が続々と会社を去った。毎年、2人か3人は新卒入社してくる。一方で、同じくらいの人数が毎年辞めている。

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彼らの退職理由は「結婚や学び直しをしたい」「夢を追いかけたい」などさまざまだ。
実情を知らなかった時期の私は、退職理由は前向きなものが大多数だと思い込んでいた。だがある日、他部署の上司から貴重な意見を耳にした。
「皆、同じ業務をして、同じ時間働くなら、給料の良い方に飛び付く。給料が、仕事量に見合っていない」
「会社は、新卒入社した子達が退職したことを、重く受け止めていない。原因を追求して、改善しない限り、同じことを繰り返すだろう」
私や同僚も「給料が少ない」と不満を抱いていた。私の場合は、一般職で入社したから低収入なのか、と半ば諦めていた。だが、人によっては、退職する第一の理由に値する要因だと知った。
私は幾度となく、会社の体制や態度に納得がいかずに、直属の上司に辞めたい、と直談判した。その度に、上手く口車に乗せられた。悔しかった。長く在籍する私でさえ、納得がいかないのだ。「早めにけじめをつけるのが、身のためだ」と判断して、進退を考えて行動に移すのも、無理はない。

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後輩の一人は、業務量が過多で、相談できる存在が周りにいなかった。結局、「自分が自分でなくなる」と感じ、退職に追い込まれた。
彼女が退職する際、上司は引き留めずに「やりたいことがあるなら、応援するよ」と、背中を押す言葉を掛けた。やりたいことがある、という言葉は退職するための「表向き」の言葉の場合もある。言葉の裏に隠されている、本音や事実を突き詰めて考えた社員は、社内に何人いただろうか。

各々、日々の業務に精一杯で、周囲の状況把握ができておらず、助け舟を出すことはなかった。身近に彼女の味方がいれば、救われ、退職を回避できたかもしれない。
会社を去ってから気付く、退職者の存在の大きさや、有望さ。会社は、非常に惜しいことをしている。
「新卒入社の若者は、根性がなくて続かない」のではない。見過ごせないくらいの、会社の体制や、上司の部下に対する態度や評価、社風に問題がある。「会社の決めたことに従えないのなら、辞めてもらうしかない」と、総務が考えている時点でおかしい。

私がいくら問題提起をしても、総務は門前払いで、感情的になって怒られたこともある。根幹を正さなければ、何も変わらないのに。まだ若いうちに、所帯も持っていない、今の時期に転職しよう、と考えるのは、ごく一般的な考えだろう。

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若手だけにフォーカスされがちな離職の問題だが、中途入社した社員も、6年程で去る人が多い。さらには、役員が「新卒を採用しても、どうせ辞めてしまう。それなら若い中途を採用した方が良い」と発言したことにも、衝撃を受けた。新卒採用は先行投資で、費用対効果的にも3年はかかることを知っていた。だが、会社のトップが「せっかく育てたのに」とこぼしたことに、違和感を覚えた。

いつの時代でも「最近の若者は」と言われる。昔は上司も「これだから、最近の若者は」と、言われてきたはずなのに。
社員一人ひとりが、相談や意見をしやすい雰囲気を作り、他者に対して関心を持つべきだ。会社は、社員の意見を聞き入れて、参考にする意識が必要なのではないか。世代や立場を越えて、手を取り合う意識を高めていくことが、若手を含めた、会社全体の離職率の低下に繋がるのではないか。