大学生頃、キャリアセンターの方、就職活動に関しての講義をして頂いた民間の就職サポートの会社の方には、お世話になった。
いつ終わるか、どこに就職が決まるのか分からない、不安だらけの学生時代の私に、就職活動のいろはを教えて頂いたからだ。
自然と、採用活動をする企業側や、就職サポートの仕事にも、関心を持った。
だが、結局、希望通りにはならず、私は異なる業界、職種の道に進むこととなった。

会社の雰囲気が伝わりづらいコロナ禍では、採用担当者が企業の顔に

入社後、経理業務一本だったが、上司が総務課も兼任していることもあり、3年程前から、私も新卒採用に携わるようになった。
採用活動中は毎日、エントリー者数やメールチェックをする。
やがて採用担当として、自社ホームページに私の名前が載るようになった。
後に、内定式や入社式の準備のみならず、内定者フォローや、新入社員研修のスケジュールの組み立てまで、任せてもらえる業務が増えた。

他の社員よりも私の方が学生と関わることが多いこと、コロナ禍で「オンライン説明会」「オンライン面接」が主流になったことで「採用担当者は、企業の顔」のという自覚を、一層持つようになった。なので「常に見られている、選ばれている」という意識を持って、オンライン上で学生と接している。
また、面接で会社訪問する機会がなく、会社の雰囲気が伝わりづらい。唯一、学生に会社の雰囲気を伝える重要な役割を担うのが、採用担当者だ。説明会や面接後に音沙汰がない場合、採用担当の印象が悪かったことが一因かもしれないのだ。

生涯で一社だけの新卒入社先を、苦しみながらも検討する学生が眩しい

私の勤める会社は、知名度が低い、田舎の中小企業だ。
春から採用活動を始め内定を出しても、大抵の学生は大手に流れたり、第一志望の企業に持っていかれる。
自ずと採用活動の期間は延長され「秋採用」で売り出し、人材を確保した後の内定式は年末近くにずれ込む。
採用担当としては、入社承諾書が受理になるまでと内定式までの期間での、内定者の辞退を防ぎたい。

色々なことを、企業側の視点で考えてしまうと、今の学生の思考や行動が分からなくなる。私自身が自社の新卒入社第一号なので、なんとなく「中途入社の先輩方より、フレッシュである」と思い込みがちだが、当然ながら年々フレッシュさは色褪せてきている。   
一方で、生涯で一社だけの「新卒としての入社先」を、限られた時間の中でもがき苦しみながらも検討している学生は、大変そうだが眩しい。彼らは、社会や会社の実態をまだ知らない。
経験を基に、次の転職先が決まる傾向がある「転職」とは違って「ポテンシャル」を評価される彼ら。
業務や営業所の希望が100%通る訳ではないが「自分で稼ぎ、働くことへの憧れ」を持って、オンライン上で自己PRし伸びしろを提示する学生に、私の方が憧れを抱く。

後輩達が「この会社に入って良かった」と思う瞬間が訪れますように

また、学生の抱く自社のイメージと現実のギャップが大きい予感がしていても、立場上会社をアピールし入社意欲を沸き立てることは、学生に嘘をついていているようで胸が痛む。
入社承諾書のサインを見て嬉しい半面「もっと違う会社を探した方が、この子は幸せではないのか」と可哀想に思う時もある。人の感情は扱いづらい。

来年の入社式には、何人の社員が参加するのか。その時私は、胸を張って笑顔で「入社おめでとう。頑張ってね」と、新入社員に声を掛けることはできるのか。
願わくば、後輩達が「この会社に入って良かった」と思う瞬間が、入社後に一瞬でも良いから訪れて欲しい。

そのために今出来るのことは、目の前の内定者、求職者に対して、精一杯寄り添った対応をすることだけだ。
「会社にフレッシュな風を。新卒者に後輩を作ってあげて、皆が成長できる環境作り」をスローガンに掲げて、今日も私は採用活動を、学生側からしたら就職活動を、実りあるものにすべく奮闘する。