1か月前、同期が会社を辞めた。

同期の彼女はほとんど出社せず、顔を合わせることは少なかった

今年の4月、私は新卒として今の会社に入社した。新型コロナウイルス感染症の実態もあまり解明されていなかった頃だったので、当然のごとくオンラインでの研修になった。会ったこともない同期と画面越しにグループワークをし、上京したてで慣れない土地から一歩も動かずに過ごした。

そして5月。1か月のオンライン研修を経て、それぞれの部署に配属される。私は本社で働けるとばかり思っていた。なのに発表された配属先は、都内のもう一つのオフィスだった。50人ほどいる同期の中で、配属されたのは私を入れてたった3人。同期と会って仲良くなる前に、別のオフィスに隔離されてしまった。

緊急事態宣言が解除されたあと、ようやく同じ部署の同期と会ったが、3人で顔を合わせることは少なかった。なぜなら、同期の美希ちゃんがリモートワークばかりでほとんど出社をしていなかったからだ。

決して働きやすい会社というわけではなかったので、驚きはなかった

もともと多様な働き方を推奨している会社だったこともあり、本社ではほとんどがリモートワークだった。しかし対面での業務が多いこの部署では、どうしても週3回くらいは出社をしなければならなかった。美希ちゃんはそれが嫌だったようだ。緊急事態宣言が解除されたからといって、感染者がゼロになったわけではない。そんな中で出社をすることが耐えられず、美希ちゃんは上司にそのことを話した。幸いにして美希ちゃんのチームは比較的出社の必要性が低く、可能な限りリモートワークに切り替えて業務を行なっていたようだ。少しずつ会社で美希ちゃんの姿を見ることが減った。

そして美希ちゃんは、11月に会社を辞めた。それを知ったのは辞める前日、人伝てだった。理由は「家庭の事情」とだけ聞かされた。私がそれを知ったあとも、部署の公の情報として伝えられることはなかった。

決して働きやすい会社というわけではなかったので、驚きはしなかった。仕事のきつさに耐えられなくなったのかもしれない。本当に何か家庭の事情があったのかもしれない。ただ、新型コロナウイルスの影響も少なからずあったのではないだろうか。

ひっそりと辞めていくのは寂しいと感じてしまった

彼女に対して、1年も経たずにやめて忍耐力がない、とも思わないし、やめちゃうなんてもったいない、とも思わない。むしろその決断力は見習いたいと思う。でも、彼女の退職を惜しむ人は、この部署にどれくらいいるのだろうか。もちろん、半年ほど一緒に働いた後輩がやめてしまうのは寂しいだろうし、仕事の合間に教育を担当していた社員からすれば、自分の不甲斐なさを感じているかもしれない。部長やマネージャーからしたら、ただでさえ人手不足の状態で新卒がやめるのは惜しいだろう。

でもそれは、一人の社員がやめたことへの哀惜であって、彼女に対してではない。言い方は悪いかもしれないが、新卒で1年も働いておらず、ほとんど出社もしていなかった社員に対して、「この人にしかできない」仕事なんて少ないし、他のチームに退職の事実を知らせるほどの存在とは思われていないのかもしれない。彼女が1年目で辞めたことにはなんとも思わないが、新卒で入社した会社でひっそりと辞めていくのは寂しいと感じてしまった。

だから私は、いくら仕事が大変でも、惜しまれる人材になってから辞めようと思う。来年は私も2年目として後輩ができるわけだが、「私にしかできない」という仕事を見つけたい。会社における私の価値を見出し、そんな人を手放したくない、と思われながら辞めていきたい。まずはその「私にしかできない仕事」を2021年に見つけたい。