人は、時間とお金をかけたものに強く執着していくようになるらしい。
だから私は自分の身体にお金をかけることにした。
そうすることで自分に執着できると思うから。
自分を大切にできると思うから。
自分に自信が欲しいから。

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毛穴が詰まったいちご鼻が気になる。
眠たそうな一重の重たい目がいやだ。
大きいお尻がみっともない。

自分の身体の嫌なところなんて、挙げたらキリがない。
頑張ってもなかなか変わってくれないからもっと嫌になっていく。
そのうち頑張るのを諦めてた。最低限のケアだけ。
誰かが困るわけでもないし、最低限はできているから。
それでいいと思ってた。

最近、アプリで出会ったばかりの男性たちに、立て続けに体の関係を要求された。
腹が立ったし、悲しかった。
「私ってそんな安い女なのかなぁ」
友人は「会った男が悪かったのと」と前置きした後、
「安く売る人がいなかったら安く買う人もいないよ。もっと自分を大切にしたら?」
と言った。

「自分を大切にする」と聞いて、ふと考えた。
私は私のために何をしてあげているんだろう。
感覚としてはたくさん自己投資していると思っていた。
でもそれは、明日の仕事をやり抜くため、とか将来困らないようにするため、とか。
単純に「今、この時の自分自身のためだけ」にやっていることはとても少ないことに気づいた。
でも、自分のためだけって何をしたらいいんだろう。

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20代女子の「自己投資」を調べる。
ブランド物のスキンケア用品、メイク用品、トレーニング機器、等々。
知ってはいたけど買おうとしたことはない。
エステ、ネイル、ジム、等々。
もちろん行ったことはない。
自分の身体にそこまで頑張る価値があるとは思えないから。
自分の身体のあれやこれやがキライだから。

これらの「自己投資」を始めるか悩んだ。
始めたところで自分の嫌なところが変わるとは思えない。
急激に自分を好きになって大切にし始めるとは思えない。
そんな時、本でこんな一文を読んだ。
「人は、時間とお金をかけたものに執着する」

はっと気づいた。
そっか。私は自分に執着できていないんだ。時間もお金も大してかけていないから。
だから大切にできないんだ。
自分を安くしてるのは自分。
自分を雑に扱ってるのも自分。
自分の身体を大切にする方法ってこれなのかもしれない。

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まず医療脱毛を始めた。
こんな大きなお金をこんな私にかけていいのかと、一瞬迷った。
でも契約した。続けてみたら自分の身体が綺麗になっていって嬉しい。
次はジムに行ってみようと思う。
諦めてた毛穴ケアも再開してみようかな。

私は自分の身体に「時間」と「お金」をかけることにした。
自分に執着するようになりたいから。
今の自分をそのまま受け入れて好きになることは難しいから。
でも大切にしてあげたいから。
ゆっくりと、だけど着実に。
私は私の身体を好きになっていける……気がする。そうだといい。
脱毛、ジム、毛穴ケア、お高い化粧品、等々。
時間とお金をかけること。これが私なりの身体の愛し方。