節約で身体と心を壊した話をしよう。
と、書くと贅沢を勧めるエッセイだと思うかもしれないが、そうではない。お金と同じくらい、自分のことも大事にすることが大切だと言いたいのだ。
大学に進学し、一人暮らしを始めた過去の私に。

やりくり上手な私って素敵!一人暮らしを始めて節約を楽しんでいた

一人暮らしは、食材、衣服、文房具などなど、自分の生活にかけられるお金を全部自分で管理するのは大変だったけれども、大学一年生の私には楽しくて仕方なかった。
900円のシャンプーを300円のシャンプーに切り替えた。業務スーパーで安く大量に食材を買った。やりくり上手な私って、なんだか素敵!と、一人暮らしの難しさを楽しめていた頃は、まだ良かった。

しかし段々と、節約生活は静かに私の大切なものを削っていった。
高校時代はお小遣いでカフェに行くのを楽しみにしていたのに、生活費を全部自分で管理するようになってからは「あのカフェお洒落、でもランチで2000円ならやめておこう」と、行きたい場所も値段を理由に行かなくなってしまった。
本当は、節約しなくても生活に困るわけではない。なのに、節約を理由に自分が行動しないことを正当化して、何もしないことを選んでしまうようになった。

節約生活で毎日どんより無気力に。身体にも不調が現れてしまった

そのうちに、自分が生活費を使うことにすら罪悪感を覚えて、毎日どんよりした気分で過ごすようになり、カウンセラーさんからメンタルクリニックをお勧めされるまでになってしまった。

節約生活のデメリットは、精神的に無気力になるだけではなく、肉体的にも現れてしまった。
肌に合った900円のシャンプーではなく、肌に合わない300円のシャンプーを使い続けた結果、顔がニキビだらけになってしまったのだ。そして私はニキビを治すため、1ヶ月4000円するニキビ用化粧品をニキビが治るまで1年間、ずっと買う羽目になった。
さらにはニキビ痕を隠すのに、コンシーラーも買わなければいけなくなるわで、600円支出を抑えたせいで、安く見積もっても5万円弱も出費が増えてしまった。

化粧品だけではなく、食品も安いからと買った果物が半分腐っていて、結局は高いけれど質がいいものを買った方が安く上がったんじゃないか、とか。遠くの業務スーパーで買い物したけれど、バス代を考えると近くのスーパーで買った方が安かったんじゃないか、とか。

節約生活で貯めたお金で半年に一度旅行して自分の楽しみは確保していたけれど、顔がニキビだらけになったあたりで、私は気づいた。
食費と楽しみを削った節約生活で、結局は自分の身体を壊して化粧品とかメンタルクリニックの受診料と交通費のせいで出費が増えてるから、結局節約せずに毎日暮らしたのと、出費はほとんど変わってないんじゃないか、と。

さらに、お金についての本を読んで、減らすべきなのはブランド品を買ったり高級食材を毎日食べたりするといった「浪費」であり、私が削ってしまった食費やシャンプーなどの日用品は「消費」であり、基本的に減らすべきではなかったと知り、自分はお金との付き合い方が根本的に間違っていたのだ、とわかってしまった。

お金を大事にすることも、自分のためにお金を使うことも大事

お金は大事だ。なぜ大事かというと、お金は自分を幸せにできる可能性だからだ。
節約は未来の自分を幸せにする行動だけど、現在の自分も幸せにしないと、幸せを受け取るはずの未来の自分をダメにしてしまう。だから、たまの気晴らしにカフェの2000円のランチを食べたり、肌荒れしないちょっと高めのシャンプーを買うくらいの事はやってもいいし、むしろやるべきだ。

お金を大事にすることは大切なこと。でも、自分を大事にするためにお金を使うことも、同じくらい大事だということを、ニキビ痕を見るたび痛感する人が、私だけでありますように。