最近の私たちは、私たち自身をラベリングしたがっているのかもしれない。
女、24歳、独身、関西人、イエベ、骨格ストレート。
多様性万歳で、何が普通かわからない昨今。
得体の知れない自分を得体の知れたものにしようと、みんな、自分の所属先を躍起になって探していように感じる。
アイデンティティとでも言うべきか。
そんな私も、ラベリングを必要としていた。
私は、自分で自分を「HSS型HSP」とラベリングした。

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「人生 しんどい」検索。
ある日、私は通勤電車に揺られながら、こんな言葉を調べていた。
特になにかを知りたかったわけではない。ただ、ひとりじゃないような気になりたかった。

大学卒業直後に新型コロナウィルスの影響を受け、合格をもらっていた進路が破断になり、当時の私は、進路を立て直すために関連する組織で無給インターンとして働いていた。
私は、そこで自分を認めてもらうために、何かを成し遂げるために、必死だった。
「がむしゃら」と言うほど、美しくはない。他人の言動に揺られ、心は疲弊していた。自分のキャパシティーを無視して、「やりたいです。やらしてください」と言う私の言動にも、嫌気がさしていた。
やりがいは既に私の心に残っていない。ストレスで私の身体と心は悲鳴を上げていた。しかし、そんなこと全てを無視して、ひたすら誰かに認めてもらうために精一杯だった。

そんな時に、知ったのが「HSS型HSP」と呼ばれる特質である。
「かくれ繊細さん」という言葉の方が聞き馴染みがあるかもしれない。
HSS型HSPは、「かくれ繊細さん」や「刺激追求型HSP」とも呼ばれている。

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HSP(Highly Sensitive Person)の私たちは、人よりも刺激に敏感で、身の回りの些細な出来事(他人の言動や感情の動き)に振り回されやすく、疲れやすい特徴をもっている。人口の5人に1人が、HSPの気質を持ち合わせているといわれている。HSPは病気ではなく、個人の性格特性である。
そして、私が自分自身にラベリングした「HSS型HSP」は、HSP人口の30%ほどが該当する特質らしい。特徴としては、好奇心旺盛で活動的ではあるが、同時にたくさんの刺激を受け、傷つきやすく、疲れやすい。インターネットのまとめサイトでは、「エンジンとアクセルを同時に踏んでいるような矛盾を抱えている」と書かれていることが多い。

インターネットで述べられているHSS型HSPの特徴は、一つひとつが私だった。
「私が悪いんじゃなくて、これが私の特質なんだ」
私の説明書ができたような気がして、少しほっとした。そして、私は、心の中に「HSS型HSP」と書いたラベルシールを貼り付けた。

それから2年。当時とは、やっていることも、住んでいる場所も、周りにいる人も、ガラリと変化した。
しかし、相変わらず今も、他人の言動には心を消耗させているし、無茶なことに挑戦しては、疲れ果てている。そして、まだ誰かから認められたい気持ちもしっかり残っている。こうやって、エッセイを書いているのが何よりの証拠だ。

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あの時のラベリングが私の苦しさを取り除いてくれたわけではない。
それでも、今の私は、当時の私よりも少し強くなれた気がする。心がいっぱいいっぱいになった時、あのラベルシールを思い出す。
「今日はなんかしんどいな。まぁ、これが私の特質か。今日は少しゆっくりしよ」
今は「HSS型HSP」のラベルシールをつけて、私は私を少し甘やかしている。そうすると、今にも涙が溢れ出しそうな心に、少しの余裕をつくってくれる。

「頑張れない時があってもいい。私は、いつも頑張っている。しかも、本気の時は、誰にも負けないくらいの輝きを放っている」

私は私をラベリングすることで、少し自分に優しくなれた。
そして、弱さを知った私は、弱いまま少し強くなれた。