私の働く会社は、俗に言うブラック企業ってやつだ。表面的には“良い会社っぽい”ルールがたくさんあって、でも空気を読むことを重んじるほとんどの社員がそのルールを利用していないというところが、まさにブラックなのだ。

私はそれが入社初期から単純に不快だった。だから、真面目に働きながらも、時には純粋でアホなふりもして、その“良い会社っぽくする為にあるけどみんなが利用しきれていないルール”を、しっかり守っている。
例えば18時には会社が消灯されてクーラーも止まる。これは「残業無しだよ!」の合図なのだけれど、誰かがこっそり電気をつけてみんなサービス残業をする。
残業は上司に報告して許可を得ないと取れないようになっているのだけれど、みんななんとなくサービス残業しているから言えなくて、上司にわざわざ報告する人などいない。
連休取得制度もあって、年に1度は5日以上の連休を取らねばならない。けれど、そこはふんわりしていて自分以外とっている人を見たことがない。

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これらのルールは1人の会社員としてではなくて、1人の人間として生きていく中でとても大切なルールだと私はつくづく思う。
「残業をしない」「連休をとってきちんと休む」。どれも当たり前だけれど、なぜか私の会社の多くの人はこれを遠ざける。恐らく日本という国では「休まずに一生懸命、お金にがめつくなく働くこと」が何よりも美徳だからだ。私の場合はこの考えに対して「古い!嫌だ!」って全身が拒否をする。

たとえ表面上だとしても、新たな時代に合わせたルールを作ってくれたのに、古い考えを持った人たちのせいで私という1人の人間の自由な時間が無くなっていくことが我慢できない。
だから私は空気を読まずに、ルールを守り抜くのだ。
「海外行くので連休とります!」って断る隙も入れずに堂々と言い放ち、上司すらも見たことがほとんど無い連休を取るための書類を提出する。「今このメールを返しても、取引先の人が読むのは明日だしな」などと言って定時にきちんと上がる。日々残業をしないからこそ、やむを得ない時は「今日は残業させてください……」と上司に報告することで残業代をしっかり貰う。

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他の社員が暗黙の了解でやっていないことを1人やってると嫌われないの?と思われるかもしれないけれど、ルールを守っている人を責めることは会社的にも出来ないし、自分で言うけど普段から私は割といい奴なので、そんなに嫌われないのだ。
日頃から周りの人とスムーズに仕事をしているし、臨機応変に対応を変えたり、楽しくやっている。

「自由に生きたくてフリーランス(起業)の道を選びました」というフレーズを何度も見たことがあるのだけれど、なんで会社員だと自由になれないのか?全く意味がわからない!
会社員だって自由でいたい。年に何度だって旅行に行きたいし、連休は欲しいし、残業なんてしたくないし、フレックスが希望だし、満員電車が好きなわけないし、リモートワークが出来る日は選びたい。
「仕事したくない」なんて言わないから、せめてもの自由が欲しい。

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「空気を読む」は日本人独特の習慣だけれど、これが損するように使われていることがどうしても耐えられない。身近なところに私のような人間がいることで、「確かにこのルールあるのに誰も守らないのって損じゃない?」って気づく人が増えていけば良いと思う。

良い意味で空気を読まない会社になって欲しくて、でも大きな声で言うのは少し厄介だ。
だからこそ、純粋なふりをしながら行動で示して、計算高く自由を手に入れようというのが私のたくらみだ。