高知県は、私の第2の故郷と言っても過言でない場所だ。
と言っても、元々は望んで高知に住むことを選んだわけではなかった。第一志望だった私立大学(東京の大学だ)に落ちた私が、親の勧めで国立大学を選ぶことになった際の選択肢でしかなかったのである。

高知県行きが決まった時は、自分の住んでいる街から6時間もかかる僻地で初めての一人暮らしをすることに相当嫌気が指していたし、ダメ押しに全国ニュースで、
「セブンイレブン、高知県に初出店」
というニュースが流れたことで私の口からは乾いた笑いしか出なかったことを覚えている。

海鮮、薬味、漁師めし。高知の魅力ある食文化

そんな始まりだった高知生活だが、私は早くも1年目にして高知に魅了されることとなった。

ひとつは皆が口を揃えていうだろうが、食だ。
高知は海産物が本当に新鮮で、私は生臭くてずっと苦手だったカツオがここで大好きになった。他にも、ウツボ、グレ、シイラ……スーパーにはこれまであまりお目にかからなかった魚たちが当たり前のように破格の値段で並び、高知の食文化の強さを学んだ。

それだけではない。
高知県は生姜やミョウガなど、薬味の生産も日本一なのだ。
新鮮で美味しい魚たちと、香り高い薬味たち……。これらを全て網羅した食事が、「土佐巻き」である。元々は漁師飯だそうで、簡単に言えば太巻きだ。

藁で香ばしく燻されたカツオのタタキと、高知県産のミョウガ、ねぎ、ニンニクなどがこれでもかとばかりに詰め込まれたいいとこ取りのメニューである。口いっぱいに頬張ると、藁焼きの香ばしい香りに酢飯がぴったりと合い、そこから鼻に薬味が抜けていく。
一度高知の食を知ってしまえば、あなたももう戻れないだろう。

お節介なくらいが丁度いい。エネルギーあふれる人たち

もうひとつの高知の魅力は、人のエネルギーである。
はちきんの女たち、と言われるだけあり(意味はご自身でお調べいただけたら幸いである)、高知の女性はとてもエネルギッシュだ。

それは良くも悪くも離婚率にもよく現れており、高知の離婚率はなんと5割。小学校の子どもたちの話題が片親かどうかという内容が普通という話を地元の先輩から聞いた時は驚いて口が開いてしまったことを覚えている。
もちろんだからといって高知の男性たちが弱いわけではない。全体的に住民のエネルギーが高いのだ。

毎週日曜日には、高知駅の近くの商店街、帯屋町で日曜市が開かれる。駅の近くの大きな公園、中央公園では頻繁にマルシェや食のフェアが開かれ、毎週住民は行くところに困らないほどだ。

もちろんこれは駅の周りだけで起きているわけではない。少し西に行けば、日高村という村で名産のトマトを使った小さなお祭りが頻繁に行われていたり、少し東に行けば後免町(ごめんまち)という町でごめんな祭という、これまで言えなかった「ごめん」を言おうなんてちょっと小洒落た祭りが行われていたりする。

高知の人々のエネルギーの源は、
「やったら楽しそうやき!」
「みんなが笑顔になりゆうのが見たいきね」
といった、皆のため、ひいては高知のためというものが強いように思う。
お節介なくらい、相手のためになんでもしたい。人情に溢れた高知の人々が、私は大好きになった。

「ついで」の旅では、この街の面白さはわからない

たった4年、されど4年。
美しい自然、美味しい食事、温かい人々……。
こんなに素晴らしい土地を知ることができたことを誇りに思うし、まだ高知に行ったことがない方にはぜひ訪れていただきたい。

高知はお酒文化も強く、特に日本酒は有名だ。「返杯」制度をご存知だろうか?
あなたがもし高知の中心地にあるひろめ市場という商店街でお猪口を握ったなら、あなたは朝まで高知の酒飲み達と盃を交わすことになるかもしれない。

何が言いたいかというと、日帰りでは高知の面白さは半分も堪能できないということだ。
愛媛旅行のついでに、香川に行ったついでにといった、ついで旅行は実はあまりおすすめしないので、ここに記しておく。