また行きたいと思う町。
それは、「壱岐島」。
◎ ◎
私は、「島全体がパワースポット」と言われる壱岐島に、吸い寄せられるように旅に出た。小さなキャリーケース1つで。
きっかけは本当に些細なことだった。
ぼんやりと眺めていたテレビ番組に、壱岐島で働く女性が出演していた。
「壱岐島って、何?」
気になって仕方がなくなり、気づいたらスマホを持つ手が、宿を予約していた。
その2日後。
私は、キャリーケースを1つ持ち、旅に出た。駅に向かう道中で、「壱岐島 何県」と検索する始末。でも、絶対に行かなきゃならない、そんな気がしていた。
新幹線に飛び乗り、フェリーに乗り継ぎ、降りたらそこは一面が山とターコイズブルーの海の世界。ゾワっとした。わくわくが止まらない。
あ、ヤバい。
レンタカーを予約することを忘れていた。
あっという間に港にひとりぼっち。やっちまった。
検索して手当り次第レンタカー会社に電話した。やっと見つけた最後の会社で1台借り、近くのコンビニで待つことにした。
◎ ◎
物珍しいのだろう。ゆく人ゆく人が「あんた、どっからきんなっただ?大丈夫か?」と声をかけてくれ、挙句の果てにお茶や連絡先を書いた紙を渡してくれた。
人の温かさに触れて、何だか涙がこぼれそうだった。
2日前に予約した民宿に到着すると、あったかい家族が待ってくれていた。
部屋に戻って、待ちに待った夜ごはん。
お造りとかそういう奇をてらった物ではなく、焼き魚と白飯、お味噌汁、サラダ。至ってシンプル。でも、私にはそれが沁みた。
美味しくて美味しくて、ご飯を3杯もお代わりしてしまった。
おばあさんが、「よぉ食べてくれて嬉しいよぉ」と言いながら、よそってくれた。
変わって朝も、白飯、干物、お味噌汁、海苔。
美味しかった。本当に美味しかった。夢中で食べた。
宿を出る時。
おばあさんが、「道中食べてな」と、握り飯を持たせてくれた。たった一晩しかお世話になっていないのに、扉を閉めた後、心がきゅっとなった。
海辺のテトラポットに腰掛けながら、ぼんやりと海を眺めていて気付いた。
ココロが、悲鳴をあげていたんだ。
◎ ◎
このコロナ禍、楽しいことがどんどんなくなり、一人暮らしだった私は仕事以外に家を出ることが殆どなくなっていた。
自分では「自分時間を楽しむプロだ!」と思っていて、それはそれで楽しいと思っている。でも、やっぱり「ヒトのあたたかさ」は私にとって本当に重要だったらしい。
それに気付いた途端、涙がとめどなく溢れていた。胸のつかえがスっと取れた気がした。
ココロが、深呼吸した。
壱岐島が、「島全体がパワースポット」と言われる所以。
確かに、歴史上の神々が司る建物が沢山あるが、理由はそれだけではない。
島の人々が、人を大切にしている。だから、来た人はココロにパワーを貰うことが出来る。
道中、立て看板にあった「超我の奉仕」というコトバ。
本当にそれが体現されている町だと思った。
ガソリンを給油してくれたお兄さんも、スーパーのスタッフさんも、街ゆく人みながきらきらしていた。
それに加えて、本当に美味しい自然の恵みが今もなお大切にされている。
宿で食べた白飯もお魚も野菜も、全てが素朴だったが本当に美味しかった。
壱岐島を旅立つフェリーに乗る時、私は、心の中で「また帰ろう、絶対」と誓った。
次この町に帰ってくる時は、一体どんな自分になれているだろうか。
今から楽しみで仕方がない。