基本的に自分のことが好きでない私だが、2つだけ自分を誇れることがある。
それは、「短期間の爆発的な集中力」と「負けず嫌い」だ。
裏を返せば普段は集中できない、負けを認められないという短所にもなるものだが、私はこれらを長所として捉えている。

そのように長所と捉えて自己肯定ができるようになったのは、幼少期からの家族や周囲からの肯定があったからだと考えている。
中でも印象的だったのが、小学校のプール参観、中学生で受けた漢字検定、高校生で出場した弁論大会の3つだ。

◎          ◎

順番に振り返ると、まず小学校のプール参観が思い出される。
参観日の日の授業課題は「25mプールをクロールで泳ぎ切ること」。
私はそれまで、クロールで泳げるのは長くて25mの半分くらいの地点までだった。
その参観日の朝、母と約束したことがある。
その約束は、「クロールで25m泳ぎきったらお気に入りの店でチョコケーキを食べる」。
その目標というか、餌をぶら下げられた私はその日、25mを泳ぎ切った。
何度も足がつきそうになり、傍から見たらクロールではなく溺れているようにしか見えなかったらしいが、その日の私は水泳に対する異常な集中力と執着を持ち、泳ぎ切ることができた。
他の保護者や同級生は大爆笑だったらしいと、あとから聞いた。でもその中で母は、私の必死で泳ぐ姿に笑いながらも泣いていたそうだ。
その日はケーキを買ってもらえたし、先生からも母からも褒めてもらえた。
私が「かっこよくなくても食らいついて結果を出したことには、嬉しいことがついてくる」と学習し、自己肯定感を高めた出来事だった。

◎          ◎

次に中学生の時に受けた漢字検定が印象的だ。
受験したきっかけは単純。姉が受験するから私も受けてみようという気軽な気持ち。初めは姉と同じ4級から受ける予定だったが、問題の難易度を見て3級でも解けることが判明し、姉の受ける級より1つ上の3級を受けた。
当時の私はなんでもできる姉に劣等感を持ち、何かと張り合っていたのだが、この漢検では勝てるかもしれないと思った。負けず嫌いに火がついた瞬間だった。

結果は姉と2人揃って合格。その後も順調に上の級を受けていった私と姉だったが、姉は準2級まで合格したところで受験をやめ、私は2級で1度不合格だったものの2度目の挑戦で合格。当時中学2年生だった。
3年生で2級に合格する生徒はこれまでもいたらしいが、2年生で合格するのは学校でも初だったらしく、先生方から「すごいね」「頑張ったね」と声をかけてもらえた。もちろん家族からも。
私は「自分にも得意なことがあるんだ」と自信を持った。ここでも自己肯定感を高めることができたのだ。

◎          ◎

最後に高校生で出場した弁論大会だが、選考の場での自分でも驚くような集中力と負けず嫌い根性で校内選考を勝ち上がり、校内最優秀賞で県大会への出場権を獲得。県大会では上位大会への出場権は得られなかったが、優良賞入賞という結果を残せた。
この時にも校内選考を見に来ていた祖母や、県大会も見に来てくれた母から「すごい」「想いが伝わってきたよ」と褒められ、校内でも県大会入賞は初めてだったらしく、「頑張ったな」「唯花は想いを話すとき生き生きしているし、伝える才能があるな」と褒められた。
当時の私は自分を肯定できずにいたのだが、周囲からの評価が自信に繋がり少しだけ自分を好きになれた。

長くなったが、これらの周囲から肯定された出来事が、「短期間の爆発的な集中力」「負けず嫌い」を長所として見る今の私に繋がっている。
今、私は社会に出る前の大きな壁にぶつかっているが、この長所を活かして今の壁もこれからぶつかるであろう壁も乗り越えたり壊したりしながら前に進めたらと思う。