漫然と過ごしていた昨年と違い、今年は矢のように時間が過ぎた気がする。気づけば今年もあと2か月になった。
お盆が過ぎればあとは早いと体感しているのだが、これは夏の短い山国特有の感覚だろうか。秋は実り豊かだが、坂を転がる速さで終わってしまう。気づけば冬という谷底を、私たちは静かに歩んでいる。

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昨年の今頃は、就労移行支援施設に通い始めていた。旅館を飛び出してから3か月弱経ち、ようやくエネルギーがたまったところである。
自閉症スペクトラムがあるため、接客分野で身を立てていくのは難しいと判断した。障がいのあるお客さんには親身になった接客が出来ても、障がいのあるスタッフへの気遣いは追いつかないのが業界の実情ではないか。やってもらって当然とは思わないけれど、こうした自己矛盾に違和感を覚えた。

別職種となると、やはり必要なのは勉強である。突発的な事態が苦手となると、営業やサービスよりは内勤の事務職で探した方がよさそうだ。とはいえ、ExcelもWordも旅館では使う場面が少ない。どうしたものかな、と思っていたら、銀行の障がい者向けセミナーが市内で開かれるというお知らせがあった。
終了後、会場になっていた施設のカウンセラーに声をかけられたのが通所のきっかけである。

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実際の事務所のスケジュールを想定し、体操と朝礼から一日が始まる。午前中は自主学習とビジネスマナーやキャリアプランニングなどの授業だ。一時間の昼休憩を挟んで、午後は職業訓練を受ける。名刺データの記録など、実際の特例子会社の作業例にならって取り組むことで自分の障がいの特性を認識していく時間である。その後、日報を書いて終礼、退勤という流れだ。これを繰り返すことで、通勤に耐えうる体力と気力を付けていくのである。

私は通所開始の時点で27歳だった。失業手当も翌年の夏で支給期間が終了することがわかっていたため、春以降に継続して通うことは到底望めない。もう少し色々な準備をしてから就活を始めたかったのだが、3月卒業と4月採用を目標にすることになった。

まずは応募書類に書けるように、自主学習の時間でExcelだ。キーでのセル移動から四則演算まで、初級から解き直した。IF関数は未だによくわからないが、おかげで今のオフィスでは十分通用している。

視覚情報に強い、切り替えや音の聞き分けが苦手など、障がい特性の分析をしてカードを揃えた。2月に面接をして一度落ちたものの、辞退者が出て繰り上げで採用。3月からは勤務地に引っ越してWEB通所で卒業した。目標通り、2022年4月1日に再就職を果たした。

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それからの半年は本当に早かった。
ガソリン集計に始まり備品管理、お湯汲みや資源物のまとめなどの雑務。目の前の仕事に必死でかじりついた。春はあっという間に過ぎ、夏も気づいたら終わっていた。今は雪の日の通勤靴を心配しなくてはならない時期に入り、駅ビルはブーツとツリーでにぎやかだ。

ただ、充足感が今までよりもある。今まで出来ていなかった自分のパフォーマンスに対する分析や、それを改善するために周りへ具体的にお願いすること。それらが主体的に出来るようになったことが、働くことに対する意識改革へつながったのだろう。
旅館の時にはどうしても感じられなかった、お互いへのリスペクトが声や態度に出ている職場であるということも大きい。働いていて気持ちがいい雰囲気づくりの大切さがよくわかる。

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矢のごとく月日は過ぎる。契約スタッフなので、ここにいられるのはあと3年か5年である。もっと言えば、再来年に30歳になるため、このサイトに投稿できる期間も限られている。年の初めに「昔の夢にすがらない一年にする」という宣言をしたけれど、どうやらそれは叶いそうだ。
残り2か月、良い仕事をして駆け抜けたい。