私は昔から夢見る少女だったな、と思う(言い方恥ずかしい)。とにかく色々な職業に憧れてきた。

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幼稚園に通っていた頃は、「モデルになりたい!」「お花屋さんになりたい!」「スーパーでレジ打ちがしたい!」とアホみたいに統一感のない夢を語っていた。この3つに同時に勤めるスーパーキャリアウーマンになる、というとんでもない計画も立てていた。

小学生の頃は「幼稚園の先生になる!」とピアノを弾いたこともないのに意気込んでいた。国語の授業でオリジナルの小説を書いたのがきっかけで、作家になりたい時期もあった。
中学生になると考えが現実的になっていき、漠然と「人の役に立つ!」と考えていた気がする(具体性ゼロ)。

そして大学生になった今、なりたい自分になれる方法を思いついてしまった。それは単純明快、アルバイトをすれば良いのさ!(決まった!)

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大学に入学するちょっと前、昨年の3月から家の近くにあるパン屋さんでアルバイトをしている。
焼きあがったパンにオリーブオイルを塗ってパセリをかける、パンが冷めたら袋に詰めて陳列する、食パンを5枚に切る、コーヒーを淹れてイートインの案内をする、返却されたお皿やトレーを洗う、予約の電話を取るetc……。

色々な仕事がある中で私の夢が叶っている瞬間は、レジ打ちをしている時。レジの画面に表示されているパンの画像の中からお客さんが持ってきたものを探して押すだけだし、お金の支払いはセルフでやってもらうから釣り銭のトラブルなんかは無く、想像していたより簡単だ。

スーパーでバーコードリーダー片手に手際良くこなすレジ打ちに憧れていたので、ブランコに乗りまくっていたあの頃の私が見たら「なんかちょっとちゃう」と文句を言うかもしれない。もしそんなことを言われても「今どきバーコードリーダー使うお店減ってるから!」と言い返すのみ。
セルフレジが発展した今、レジ打ちを生業にすることに憧れる幼稚園児は絶滅危惧種だろうな、なんて考えてしまう(昔でもそんなおらん)。

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そして私はアクティブ大学生なので、アルバイトを掛け持ちしている(なんてアクティブ!)。
児童館で学童の見守りという名の、子供の遊び相手をするのがもうひとつのアルバイト。6歳下に妹がいるので子供と遊ぶのは得意な方だと自負している。というか、きっと精神年齢が小学生と近いから、という方が正確な気もする。

どちらにせよ小学生とオセロや将棋で勝負したり、おままごとで毒入りのドリンクを飲まされたり、後ろからブロックでできた剣で首を切られて倒れたフリをしたりするのは楽しい(命狙われてない?)。

児童館にやって来た小学生の手洗いを指導して、おやつを美味しそうに食べる姿を見守って、皆が帰ったら部屋に掃除機をかける。出しっぱなしになっているマンガを見つけたら「ちゃんとなおしてよ」と心の中で呟きながら本棚に戻す。母親疑似体験をしている感じがするのも面白い。

小学生の頃に思い描いていた幼稚園の先生とは違って、ピアノは弾かなくていいし、絵本の読み聞かせもしない。その方が私には向いている気がする。完全に夢を叶えたわけではなくても大満足。

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残念ながら、モデルになれる顔やスタイルや度胸は持ち合わせていないし、お花屋さんは手が荒れそうだから今のところなる気はないが、作家になりたかった夢はここでエッセイを書くことで叶えた気分になっている。

数々の未来を思い描いてきたが、今はユニバーサルスタジオジャパンのクルーや映画館のスタッフ、イベントやライブのスタッフに挑戦してみたいと思っている(エンタメ好きすぎ)。
そして、高校生の頃からの夢を追っている途中でもある。薬学部で絶賛勉強中だ。
ついていくのが必死な授業もあって心が折れそうな時があるけれど、6年間勉強する道に足を踏み入れたのは自分で決めたこと。夢を叶えて高校生の私に胸を張れる私になりたい。

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私は昔から夢見る少女だった。これからもきっとそうだろう。
ドラマの影響で、バリバリ働く病院薬剤師に憧れることも、田舎の小さな村で患者に寄り添う医療を提供したくなることもある。小児科で子供と関わるのも興味があるし、見てみたい世界がまだまだたくさんある。

毎日同じ場所に行って同じ仲間と会って代わり映えのない仕事をこなす日々に、疲弊してしまった大人もいるだろう。
私は社会人になっても、なりたい自分を追いかけてチャレンジし続けたいし、ワクワクしていたい。仕事はきっとやらされるものじゃない、理想に近づくための手段だ――と、まだ何も知らない大学生が格好つけて言っている(生意気!)。