「忙しい」誰もが一度は使ったことがある(はず)の言い訳を、例にも漏れず私も使ってしまっていました。
忙しいを言い訳に、書くことから逃げていたのです。

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私の職業は、WEBライター。SEO記事と呼ばれるネット記事を書いたり、他のライターさんが書いてくれた記事を添削したり、とにかく定時の8時間ずっと文章に向き合うことでお金をいただいている、正真正銘のライターです。

そんな私の将来の夢は、エッセイだけで食べられるようになること、ベストセラー作家になること、新書を書くこと。そんな私にとってこの「かがみよかがみ」は、成長できる有難い機会です。エッセイの寄稿に挑戦するほかありません。

実際に過去に一度だけエッセイを投稿した時には、なんと初めてにもかかわらず採用していただけました。なのでいまのところ採用率100%ということになります。(といっても1本中1本なのですごくはないのですが…)

ところが、私はそこでエッセイの執筆活動を辞めてしまいました。同僚が次々と転職し、私自身の仕事が一気に増えて、「忙しく」なったからです。
「忙しいから書きたいのに書けないんだ」「もっと時間があれば、いっぱいエッセイを書けるのに」そんなことばかり思っていました。

でも、本当は違いました。その認識を変えてくれたのは、恥ずかしながら私の会社の後輩。その後輩は忙しい傍ら毎日エッセイを書いてはSNSに載せ、かがみよかがみにも月に1本以上は掲載されていました。

すごい。

いつだって私の意識を大きく変えてくれるのは、嫉妬や危機感です。あの子に負けたくない、あの子にできるなら私も。そういう思いが私を動かしてくれます。

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今回だってそうです。「あの子が私より先に本を出したら……?」そう思うと、忙しさを言い訳にしていた自分がとても恥ずかしくなりました。

「私も毎週、かがみよかがみに投稿する」2022年12月31日。年の瀬にそう決心しました。
なのに……。
今日は2023年3月18日。私は3ヶ月、エッセイが書けませんでした。

理由は自分でもわかっています。いざ書いてみると、駄文さに悲しくなったうえに、そんな駄文を評価されるのが、すごく怖かったのです。

「かがみよかがみ」に投稿すれば、掲載してもらえるかもしれないし、掲載はしてもらえないかもしれない、そんなの当たり前なのですが、掲載されない、私よりエッセイが上手い人がいる、そんな現実を受け入れるのが怖かったのです。
ただの逃げだということはわかっています。

使い古された言葉ではありますが、「負けて強くなる」は文章も同じ。負けて、評価されて、悔しい思いをして、それで初めて磨かれます。

文章は、書くことで上手くなるのではなくて誰かに読んでもらったり評価してもらったりして初めて上手くなるんです。それはプロのライターとして、編集者として、たくさんの記事を書いたり添削してきたりした私は痛いほどよくわかっています。

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WBCで大活躍している大谷翔平選手だって、負けて学んだことがあるから、すごく強い。負けから逃げている人に、勝つ権利は得られない。
すごくすごく当たり前のことなのに、私は負けたくなくて、一歩が踏み出せませんでした。

だから私は、先週24歳の誕生日を迎えたこのタイミングでいま、改めて歩き始めます。この原稿も起用されるかわからないですし、今後も、何本中何本がサイトに載せてもらえるかわからない、もしかしたら1本も載らないのかもしれない。

けど、書くことから逃げていたこれまでの私と比べたら大きな成長だから、自分を褒めてあげたい。

ライターとして働いているから、文章を添削したり指導をしたりする側だから、「文章上手いね」とよく言ってもらえるから、だからこそ、踏み出せなかった一歩でした。

少しの自信が、一歩踏み出す自信を奪っていました。

「忙しい」の鎧をまとって、書かない自分を正当化するのはもう辞めます。

駄文しか書けない自分を受け止めて、評価されるのが怖いのを認めて、それでも一歩踏み出す。だって、きっとそこには、合格とか不合格とかではなく歩き始めた人にしか見えない成長があるはずだから。