私は冒険できない性格だ。一度成功した道があると、そこにしがみついて同じやり方をしてしまう。自己成長のためには、一歩踏み出して違うことに挑戦した方がよいのだろう。しかし、損をしたくないという考えから、自分の安心できるフィールドから、なるべく出たくないと考えてしまう。

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例えば、新しい口紅を買おうとする時。季節や流行も変わるし、自分の見た目も変わる。そのため、垢抜けるには違う色のリップに挑戦することも必要だろう。しかし、「〇千円でリップを買って、自分に合わなかったらどうしよう」という思いが先行して、なかなか普段の口紅から冒険して、他の商品を試すまでに至らないのが現状だ。

そんな私でも、唯一冒険できるものが、味である。
「あの味とあの味を混ぜたら美味しくなさそう……!」というような、味の想像のつかない料理や、「こんな食材あるんだ」といったような珍味も、比較的抵抗なく食べることができる。
購入に失敗したと思うような食べ物を手にとってしまったとしても、食品は一度食べればそれきりであり、被るショックが少ない。それゆえ、味は自分にとって冒険できる事柄なのだろう。

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美味しくなさそうな味だ、という予感がありつつも、つい買ってしまうものの代表。それは、各観光地で売られている、ご当地ソフトクリームである。

初級編。
北海道等のラベンダー味。野菜の産地で売られる野菜フレーバーのもの。老舗が付近にあれば見かける、味噌や醤油を使用したソフト。これらは食べる前から味の想像がなんとなくつく。ただし、内心では「おいしそう。でも普通のバニラだけの方がおいしいのでは……」と思って買う。そして食べると「おいしい。けどこの1回でいいかな」と思う。

中級編
海の観光地にありがちな、うに味やしらす味。長野や静岡で売られる、ワサビソフトクリーム。味はおおよそ見当がつく。しかし、その心のうちは「まずくはないかな。でもソフトクリームとしてではなく、別々に食べたほうが絶対おいしい組み合わせだ」。そして感想は「思ったよりはまずくない。美味しいという訳でも……ないかも……」

上級編。
ご当地名物の料理を再現したもの、例えばうどんソフト・もんじゃソフト。食材をそのままクリームに載せてしまったもの、例えばカキフライソフトやバッタソフト。まだ私も食べたことがないので、どのような味か気になるところだ。(残念ながら私には)美味しさを追求して、開発されたソフトクリームには思えない。むしろ、まずそうだ。

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しかし、どんなに美味しくなさそうだと予想できるソフトクリームでも、その観光地に行くと、買ってしまう。ちょっとした怖いもの見たさと旅での高揚感が、私にご当地ソフトクリームを買わせるのだ。

私の内にあるわずかな冒険心は、このような時にしか発揮されない。自分の見た目についても、進路決定をする際についても、もうちょっと、冒険できたらよいな、と思う。このソフトクリームを食べる時のような勢いで。

ビーグル犬のスヌーピーで知られるアメリカの漫画(チャールズ・M・シュルツ作)の「PEANUTS」に、私にぴったりの名言があった。主人公チャーリー・ブラウンの言葉である。

‘Life is like an ice cream cone… You have to learn to lick it!’
「人生ってソフトクリームみたいなもんさ…… なめてかかることを学ばないとね!」

思い詰めすぎずに、自分に自信を持って気軽に冒険できるように背中を押してくれる一文だ。