今年の3月末、長年住んでいた東京を離れ、地方へ引越しをした。

学生時代、そして社会人になってから、漠然と他の場所でも暮らしてみたいという気持ちを持ちつつも引越すきっかけや、必ずしも引越しをしなければならない状況でもなかった。結局、決定的な理由がない限り、私が重い腰をあげることはなかったのである。

環境も自分自身も変えたい、チャレンジしたい。きっかけはコロナだった

昨年の4月、新型コロナウイルスによって、緊急事態宣言が発出され、当時働いていた会社からは、リモートワークへの切り替えを言い渡された。その当時は、すぐ終わるだろうとか、またすぐ出社だろうとか、安易な考えを持っていた。

現実はそんな甘くなく、1か月どころか気付いたら2020年が終わろうしていた。人に会うという当たり前のことができず、何をするにも消毒や検温……。代わり映えのない毎日に嫌気が差していた。

さらにその当時、仕事そのものにも疑問を持っており、「家で仕事ができるなら、コロナが大流行する東京で暮らす意味って何なのだろうか……」「本当にこれがやりたかった仕事なのか……」そんなことを考えていたときに、テレビでは新型コロナウイルスがきっかけで地方移住をした人に密着したVTRが流れていた。

私は、これだと思った。決断するなら、絶対に今しかないと思った。これを逃したらきっと何も変わらない。変わるチャンスは今しかない。

環境も自分自身も変えたい、チャレンジしたい。そんな思いが頭を巡った。

地方移住をする前に徹底的に調べ、縁もゆかりもない地方へ引越しした

東京以外で暮らしたことがなかったので、不安がないといったら嘘になる。だけど私の意志は強かった。決断を下したあとの行動は、自分でも驚くくらい早かった。

地方での仕事、家、公共交通機関など、インターネット上で調べられることは片っ端しから調べた。いや、徹底的に調べ上げたといった方がよいかもしれない。

地方といえども選択はたくさんある。最初は東京から遠く離れたところにしようと思っていた。だけど東京に用事があることもあるだろうし、ある程度生活する上で便利なところが良いなど、自分の中で条件が整った。そこに加えてやりたい仕事。

そんなこんなで、あっという間に、仕事も家も車も全部決めて、縁もゆかりもない地方へ引越しをし、今年の4月から新生活をスタートさせた。最初の1か月は気付いたら終わっていて、悩む暇さえなかった。

ずっと東京暮らしだった私にとって、「第2のふるさと」といえる場所

5月に入り、ホームシックになったのと同時に、慣れない新生活の疲れも重なり体調を崩した。体調を崩すと良からぬ考えが頭をめぐる。「なんで知り合いもいないこんな地方に……」。そんなとき助けてくれたのは、こちらへ来て一緒に働いている仲間たちだった。

もともと人付き合いも多い方ではなく、人間関係の構築も驚くほど苦手だ。これまでも人間関係で何度も悩まされてきた。けれどこちらへ来てから、自分でもびっくりするくらいのスピードで彼らと仲良くなった。

彼らの中で東京から来たのは私だけ。そんな私をいつも助けてくれて、遊びにも連れて行ってくれる。コロナであることを忘れるくらい、毎日が濃くて楽しい。

たった4か月だけど、ここは第2のふるさとといっていいくらい大好きな場所となった。東京にはない人間関係の濃さ。東京から来た私を受け入れてくれる懐の深さ。

くだらないことを言って笑わせてくれる人。野菜をくれる人。色んな人がいるし、驚くこともあるけれど、自然豊かで人もあったかい。

長年暮らした場所ももちろんふるさとだ。だけど、その時間は関係ない。たった4か月だけど、ここは私にとって第2のふるさとといえるくらい大好きな場所となった。