夏の思い出、すぐに思い浮かぶのは学生時代。むしむしする陽が明るい帰り道。自転車を押して友人と長い通学路を歩き、コンビニに寄ってアイスを買い、話しながら電車を待つ。

大切な友人がいるから、私がいるわけで、青春だなあと思う。

友人との青春があるなら十分では?という意見が聞こえるかもしれない。私もそう思う。しかしコンプレックスが一つ。

◎          ◎ 

異性との夏の思い出がまるで無い。

強いて挙げるなら、小学校の淡い初恋……みたいな、そんなレベル。ほんわかした初恋とは違う、こう……爽やかで甘酸っぱい制汗剤があるかは分からないがそういうイメージの、学生特有の恋愛経験がないのだ。
ぶっちゃけ夏に限らず、学生時代異性と良い感じになって付き合う、みたいな経験がないので、重くはないが地味にコンプレックスなのである。

そう、要は学生時代まともにできなかった青春を、遅くないうちにしたい!!!!と、多少一般的な価値観で叫んでいるのである。
なんとなくそのうち彼氏とかできるかなあとか思ってた中学生の私に言ってやりたい。
時間が過ぎるのは、あっという間だ。

◎          ◎ 

乙女チックな思考もあるため、こうも上手くいった恋愛経験がないと少しこじれてしまっているような気がして、ぐだぐだモードになってしまう。そんな私はあまり好きではない。でも結局私はぐだぐだするのでこういう自分は受け入れるしかなくて。

そうしていると最近生まれた急成長のポジティブな私が「でもさあ……」と、脳内で発言しだす。

「それはそれで、1回置いておこう?ぐだぐだしているのは変わりたいサインだもんね?良い傾向だよ!最近将来設計とか先のこと考えるの楽しんでいたじゃん!」

そうだった。ええと、私はこの先何がしたいんだっけ。そうだ、やりたいことがたくさんあるのだった。5年後、10年後……いつかこれがやりたい、叶えたい。

逆算して、今できることは何だろうと自分に問いかける。

それはやりたいこと、叶えたいことのための準備、例えば1人暮らしで得られる自立力や、ちょうど良い生活リズムに、気持ちのオンとオフ。社会人としての土台作りは自分磨きにも繋がると思った。
そして何より転職に動き出す前の、時間が許されている今、全力で遊び尽くすことだとも思った。

はっ……と、思案から抜け出して私はカレンダーに目をやる。今、季節はもう夏を迎えようとしている。そうだった、今年のスローガンは時間が許す分だけ、のびのび好きなことをして、遊ぶのだった。現実に戻った私は、はやるような気持ちになった。

ええと、今年の夏はどうしよう。そうだ、これにしよう。

『今年の夏祭りで、定期的に会っている気になる異性と会う、話す』

◎          ◎ 

これだ、ベタで頭が悪いかもしれないが夏はとりあえず祭りというイベントが待っている。
デートしたいなんて思うな、テンション上がるあまりにいつでも着れる浴衣は着るな、TPOに従え。会えるだけでラッキーなんだ。楽しい感情ならそれで良し、切なくなったら来年に賭けろ。運良く、楽しく、前向きに会って話せる相手と出会えたんだ。どうせなら縁に感謝して、楽しく過ごせ。

コンプレックスを抱える私。恋愛下手な私、戒める私、自問自答の私、ポジティブマインドの私、そして欲張りな議長の私はどうしてもまだ青春がしたいらしい。

夏の目標を立てておきながら、気になる人に気持ちが向き過ぎなくてもいんじゃね?と軽く構えている自分もいる。誰とどこで何をするかは、私が選べるので、その時一緒にいたい人といることができたら良いやぐらいまで考える。
礼儀を忘れず周りを楽しく巻き込んで、夏に笑顔の自分がいますように。