私は恐らく、20代の社会人女性として平均的な美意識を持っている。
もしかしたら中の下くらいかもしれないが、ざっくり言えば平均点だと思う。同年代の女の子の美意識に対して「そんなにちゃんとやってるの!?」と感じることもあれば、「わりとテキトーなんだな」と思うこともある。アパレルや美容系の仕事をしているような人たちのなかに混ぜられたらド底辺の意識なんだろうけど、全体的にみたらきっと、大体真ん中くらいだろう。

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そんな私が家を出る前に行う「かわいい」に繋がる工程について、聞いてほしい。全て我流かつなんとなくで実践していることなので、参考にしてもらえる内容ではないが、温かく見守ってほしい。

とにかく大変だとアピールしたいので「それは最低限度のエチケットなんじゃ?」「美以前に人としてやるべきことをやっているだけなのでは?」と思われそうな、基本的な工程についてもわざわざ書いていく。出来る限り大変ぶりたいんだ、私は。

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まず、起きたら冷水で顔を洗い、化粧水を吹きかける。そのまま全身に化粧水をまとったら、再び顔に。X(旧ツイッター)で「薄肌の人は何回かに分けて化粧水を浸透させるといい」と見たため、それを実践している。顔には乳液、身体にはボディクリームを重ねたら、ヘパリン類似性物質油性クリームを塗る。これは私がアトピーであるため、皮膚科から処方されているものだ。症状が出ている部分にのみ重ねるのだが、私の場合全身の皮膚のほぼ全てがガサガサしているため、多くの場所に塗る必要がある。

これが塗れたら、その上からプロトピックという薬を塗る。ステロイドとほぼ同じ役割を果たす薬らしい。小さなチューブ型のため、いつも限界まで絞り出している。塗り終わったら、同じくアトピー用の飲み薬と、痩せるために気休めで買ったサプリを流し込む。以前は肌のターンオーバーを促進させるLシステイン配合のサプリも飲んでいたのだが、ターンオーバ-が早すぎると皮膚が弱くなるという説を知ってから、なんとなく止めている。

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次は化粧だ。ティッシュで顔の脂分を除去したら、鼻の毛穴を目立たせないための下地を塗る。小鼻横の赤みを消すため、グリーンの下地も重ねる。顔全体の色を均一にするための下地と、トーンアップのための下地も塗る。何回下地って言えば気が済むんだ、私。

眉毛にマスカラを施し、足りない部分をリキッドで書き足す。上瞼にイエローブラウンとダークブラウンのシャドウを塗り、埋没がとれた左目だけアイプチを塗る。乾かしつつ、ハイライトで鼻筋を作り、リップを塗ったりチークを重ねたりする。瞼が乾いてきたらプッシャーで抑えつつ目を開き、二重を作る。

今度は下瞼にオレンジのスティックシャドウを塗り込み、その上からアイメイク用下地をのせる。目頭側に明るいパール、真ん中にラメ。目尻側にダークブラウンで偽りの下瞼の線を書く。そこにオレンジブラウンをテキトーに重ねて、涙袋の線を書いたら下瞼は完成。上瞼に沿ってアイラインを引く。アイホールを立体的に見せるため、ピンクベージュのラメも乗せる。やる気があるときは、睫毛を上げてマスカラを塗るのだが、目も痒くなりやすいため、たまにしかやらない。

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最後に髪の毛だ。
結ぶときもあるけれど、大体おろしている。2万円ちょいのストレートアイロンを全体にかけ、最後に前髪を巻く。毛先を中心にオイルを揉み込んだら、ツヤを足してくれるというスプレーを全体にかける。前髪だけにカールキープのスプレーを噴射し、完成。

あとは時間がありあまっているときに限り、脚のマッサージを行い、足の臭いを消す粉を塗り込む。

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……以上だ。

決して美意識が高いわけではない私ですら、これだけの工程がある。多すぎる。普段から思っていたけれどこうして改めて書いてみると、やっぱり多すぎる。
私としては、世の中が進みすぎたのだと思う。

うろ覚えだが、中学生の頃読んだ有名なSF作家のショートショートに、こんな話があった。

2xxx年。暮らしの中の面倒ごとのほとんどを、家電がこなしてくれるようになった。優雅で便利な先進的生活……と思いきや、大きな問題がある。毎日のように家電が故障するのだ。決して不良品なわけではない。家電の寿命は大体5~10年。家にある電化製品の数が多すぎて、ほぼ毎日、適正寿命を迎える機械が発生するのだ。その度に修理に出したり、買い換える必要がある。どの家電も便利すぎて欠かせないものだから、そうせざるを得ない。果たしてこんな生活が正解なのだろうかと考えつつ、人々はもう戻れない。日々壊れる家電に対応する他ないのであった。

現代の女性を取り巻く状況は、極めてこれに近いのではないかと思う。肌や髪の悩みを緩和してくれるアイテムが続々出てきて、みんなもそれを使っていて。特別な美を追求したいわけでなくても、「標準的な女子」と思われたいのなら、使い続けざるを得ない。そうしてスキップできない工程がどんどん増えていく。

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「かわいい」から離れすぎないために、明日も明後日もその先も、先述した手順を踏まねばならない。耐えられないほどではないけど、ちょっとだけ叫びたくなるくらいには面倒くさいかもしれない。