私の髪には気分がある。
気分で髪の調子は変わるし、髪の調子で気分だって変わる。
そして、私の髪は恋でも変わる。
親友なら、髪の状態で恋愛状況がわかるんじゃないかな。

祖父ゆずりで色素が薄く、人より茶色い。
染めの色では出せない、絶妙な茶色が気に入っている。
「一生染めない。」
そう誓っていたのだけれど。

中二で初めてデートした日は、彼が部活の試合で負けた次の日だったから、少しでも元気付けようと思って、彼が好きなハーフアップで学校に行った。別の高校に進むことになって、彼が留学することになって、頑張れって気持ちを込めて彼が好きなアイドルの真似してショートにしたけど、見せる前に別れてしまった。

高一の時恋していた人に褒められてから髪がチャームポイントに

高一の時恋してた部活のキャプテンに、髪キレイって褒められてから自分の髪がチャームポイントだと自覚した。
高二の時、好きだった人と付き合う前、席替えで前後になって、授業中後ろから髪をいじられるのがたまらなく幸せだった。後ろ姿も可愛いって思ってほしくて、校則ギリギリのキラキラなバレッタを買って、毎日つけてた。
高三の時、受験で頭がおかしくなりそうだった私が、唯一塾に行くモチベーションにしていたイケメンに、髪キレイって褒めてほしくて、忙しくてもトリートメントだけはちゃんとやってた。いつの間にか彼のことが好きになってた。

大学一年で初めて、自分で自分専用のヘアアイロンを買って巻き髪にするのが朝の楽しみだった。大学に入って色々な出会いがある中で、塾のイケメンが忘れられなくて、もし彼がミスターコンで優勝して、世の中で有名になって、それから「実は好きでした」って言ったら、ずっと好きだったのに悔しいと思って、人生初の告白をした。でも塾で一度も話したことなかったし、案の定振られて、ショートにした。そして、染めた。

恋して髪を変えながら、そんな髪に恋していく

髪も恋する。
好きな人の好きな髪型リサーチして、会うときはいつもその髪型にして。
その人色に染まっていく。

成人式が終わって、二十歳になる前日、つまり十代最後の日に人生二回目のヘアドネーションをした。この時好きだった人は自分をまっすぐ持っていて、可愛いとか絶対言わないタイプ。髪も性格そのままって感じで癖がない。そんな彼の髪を真似して、私もストレートのままでいた。初めて二人でご飯に行く数日前、思い切って聞いてみた。
「髪の毛、クルクルとまっすぐどっちが好きですか?」
「クルクルかな。」
私の頭の中がクルクルになった。それから会う日は頑張って毎日巻いて出かけていたのは、言うまでもない。

私の髪はストレートすぎてアレンジがしにくい。巻いてもすぐ取れるし、ゆるふわができない。ずっとそれが嫌だったけど、チャームポイントだと思うようにしてからより自分の髪が好きになった。髪に恋した。あの時髪キレイって言ってくれたキャプテン、ありがとう。