現在54歳の私は、学生時代は成績の悪さに、成人してからは男運のなさに悩まされた。
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もともと結婚願望はない方だったため未婚のまま仕事を頑張るつもりでいたが、30歳を過ぎると、母方の親戚たちが事あるごとに「どうするつもり?」「子供産めなくなるよ」などと、私に関する心配事を母に言ってくるようになった。母は私の男運の悪さを知っていたために、さほどうるさくは言わなかったものの、父からはよく「結婚して初めて一人前」という言葉を投げかけられた。その言葉は深く心に突き刺さった。
私の母も29歳で結婚と当時としては晩婚の方だったが、東京の私立の女子高で教師だったために、一時期は未婚のまま仕事に生きる決心までしたという。
しかし、茨城県の片田舎で商店を営んでいた母の両親はそれを決して許さず、半ば強引に見合いをさせられ父と会った。父はお見合い数十回目、母は初めてのお見合いだったということも後に聞いた。母は過去の恋愛経験から男のだらしなさに嫌気が差しており、よほどの酷い男性でない限り、見合い相手と結婚しようと覚悟を決めていたという。
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縁遠かった私にも40歳の誕生日が過ぎた頃、当時働いていた編集プロダクションの女性社長から男性紹介の話があった。16歳年上ではあったが、人柄がよく、話も合い、トントン拍子に結婚。
16歳年上ということで父と弟だけは不服そうだったが、女性社長の采配もあり、なんとか納得してもらった。今考えると、彼女からの紹介でなければ成り立たなかっただろう。他の人なら、「年上すぎる」「知り合いに紹介してもらった方がマシ」などと横やりが入り、きっとダメになっていたに違いない。
そんな私たち夫婦には今年で小学6年生、12歳になった娘がいる。彼女は、大人の女性さながらに一丁前のことを口にするようになった。「働きまくって金持ちになる」「早く一人暮らしをする」「猫を飼う」などが主な将来の展望だが、その中には結婚の選択肢はないようだ。結婚はどうするのか聞くと、「結婚はしないかも」「子供は産みたくない!」「子育ては大変すぎて自分には無理」とはっきり主張するようになった。私も夫もかなりの晩婚だったために、胸を張って結婚を勧めるつもりはないし、今時の小学生はこんなものだろうな、と思っていた。
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しかし、私の娘が結婚しない考えだと今年84歳になった母に言うと、顔をしかめる。昔の人からすると、当然なのかもしれない。昨年の6月に弟が突然死により亡くなったのだが、結婚して大学2年になる娘がいるだけでもよかったと母はしきりに言うようになった。
弟は職場で知り合った人との恋愛結婚だったから、それはそれでよかっただろう。しかし、もしも独身のまま亡くなったとしても、それを不幸だったと決めつけるのも変な話だ。
結果的には、私も私の母も結婚して幸せになれてよかったと思っているが、周りを見渡せば離婚して苦労して子育てしている人や、離婚の危機に陥っている人も少なくはない。もし、誰かから無理やり薦められた見合いで結婚し、そのような事態に陥ったら、紹介者を怨むことにもなりかねないだろう。
だから、まずは家族や親戚たちが本人の意向もろくに聞かず、「結婚しない人は半人前」といった風潮や考え方をなくす世の中になることを望む。もっとも、既に若い人の間では、「結婚しているか?」「子供がいるか?」といったプライベートに関する質問はご法度、という風潮が広まっているようだ。彼らが年配者になっても、個人のプライベートに必要以上に踏み込まず、どんな生き方も認める世の中になることを願うばかりだ。