雨の音がきこえると、なんとも言えない懐かしい気持ちになる。
雨が降り始めると、私は過去の経験から色んな感情が混じってしまう。
そして、何度も雨を乗り越えて成長したんだなと改めて感じる。
歌って、水たまりにハマって…幼いころの雨の記憶はいつも楽しかった
幼い頃に、親戚が集まるところや家族と旅行へ行く際の車の中で、雨が降り出すと不思議な気持ちからか「あーめあめふーれふーれかーあさーんがー」と呑気によく歌っていた。その様子を見た大人達は「いいなぁ、楽しそうで」「雨でもうっとおしく感じないのはあなただけよ」など、皆が私をみて楽しそうに笑っていたのを思い出す。そして私は、皆に見て貰えるようにさらに大きな声で歌った。
小学生になると、傘からはみ出す大きなランドセルを背負って友達と大はしゃぎしていた。大きな水たまりにドボンとハマって遊んだり、傘をギュンと風で逆さにして水を貯めたりして、雨の日をこれでもかというぐらいキャッキャと楽しんでいた。
家に帰るともちろん、お母さんに靴と服を汚したことやビショビショに濡れたランドセルと髪を指摘され、こっぴどく叱られた。
静かな部屋で聞く雨音。思春期の思い出は少し寂しかった
思春期の真っ只中、結構な悩みやストレスを抱えるようになった。部活動がしんどすぎるから行きたくないが、怒られてしまうし皆に迷惑をかける、また休むことでレギュラーを取られてしまい、自分は必要ではなくなるのではないか。そんなことや、親友と些細なことで喧嘩をして口を聞けなくなってしまい、この先もう関係が途絶えてしまうのではないか。などの思春期ならではの悩みが続いていた。
共働きの両親がいない静かな部屋の中に1人でいる時、その悩みやストレスがフラッシュバックした。そこへ、雨の音がポツリポツリとなり始めた。私は孤独をしんみりと感じると同時に、雨の音に合わせて嫌なことを全て口に出して吐き出した。そして吐き出しきって疲れた後は、外の音を静かに聞き、何もかも忘れるようにしてゆっくりと眠りについた。
父が病気で入院した時、強い雨が降った。外へ出たときに見た景色は…
お父さんが病気で入院するようになった時がある。
その病院へお見舞いに行く為に綺麗なお花を買いに行き、急いで向かった。その道中に雷がゴロゴロと鳴り響き、ひどく強い雨が降ってきた。雷に怯えつつも、やっとの想いでお父さんに会えたことを雷の音で思い出す。
病室から外を眺めると、パッと光が暗い空を一瞬照らし、またすごい音で雷が落ちる瞬間を眺めていた。その後に強く地面を叩きつける雨音が響き渡っていた。どんどん強くなっていく音に不安を感じていく一方だった。
そして私が強い雨音に慣れ始めてウトウトし始めた途端、苦しそうなお父さんの呼吸が聞こえた。どんどん荒くなっていくので私は非常に混乱した。外の音が聞こえなくなるぐらいの心臓の音と、ビービーと鳴り響く機械に、バタバタと駆けつけるお医者さんと看護師さん達の声で雨の音はすっかり聞こえなくなっていた。
しばらく時間が経ち、病院をでた時、さっきの雨は嘘のようにひいていて、一筋の光が雲の隙間から差していた。そして、今でもその当時の悲しい気持ちを思い出させるコンクリートの匂いがどこへ行っても、充満していたことを覚えている。