寮の窓から見える夕陽。
でも、その時はもう夜の9時。
スウェーデンにあるこの街は、8月、9月の夏になると夜はこの時間まで明るい。
行ったことのある国の中で最北だから、日照時間の長さもここまでになるのか。
そんなことを思いながら、当時の私はこの景色を前に自分の未熟さが悔しくて泣いていた。
ゼロからイチを作った思い出。
間違いなく苦しかったけど、確かに私を成長させてくれた街。
そんな思い出を今回は書いてみる。
◎ ◎
私が初めてその街に着いたのは、19歳のとき。
若くて何も分からなくて、でもとにかく行ってみたくて選んだ街だった。
私がいた街は南の方だったから、ビルが立ち並ぶ都会というよりは、少し田舎ののんびりした学園都市。
その街に初めて降り立った時のことは、今でも忘れない。
日本から深夜発の飛行機に乗って、タイ経由でコペンハーゲンへ。
深夜の乗り換えて便なんて初めてだからドキドキしたんだっけ。
現地の空港に着いたらそこから電車に乗って、大学がある駅へ向かう。
海外の大学は、日本と違って秋から始まる。
だから田舎にある大学とは言え、空港から大学がある駅までの電車は結構ごった返していた。
そんな学生の波に押されるように、私は目的地の駅に降りた。
その瞬間に夏なのに日本とは違って、すっと冷たい風が吹く。半袖だと寒く感じるからもう長袖の季節なのか……とふと思った。
違う温度に、いつもと違う人に、新しい挑戦。違う世界に飛び込んだワクワクとドキドキ。
その時のトキメキは今でも忘れられない。
◎ ◎
それでもやっと到着したその街で、最初の3ヶ月間は絶望の連続だった。
まず、ちゃんとした生活を送れるようにする事が大変。
買い物もキッチンの使い方も、ゴミの捨て方も公共交通機関を使うのもなんでもだ。
例えば大学まで向かうのは、歩きだと遠すぎるからバスか自転車。
バスのお金がもったいなくて自転車を買ってみた。
でもその自転車も組み立て式だったから、ルームメイトに組み立てを依頼することに……。
到着して3日目に初めて「助けて!」って頼むときだったからものすごーく緊張した……!
その他にも洗濯機は予約制で、寮の全員と共有だからそれに慣れるのも一苦労……。笑
加えて寮の同じ階に住んでいる寮生は多国籍で、そもそもアジアの学生すらいなかった。
見た目が若いのもあって、何だかちょっと浮いてしまう。最初は本当に子供だと思われていたぐらいだ。笑
◎ ◎
次に、人との距離感。
最初の頃は友達を無理に作ろうと奮闘していて空回りすることがたくさんあった。
きっと私からの圧をみんな感じていたんだと思う。笑
言葉の掛け方から仕草や考え方まで、それぞれの国の文化の違いというものをものすごく感じた。
私がどんな人間か分かってもらう、説明出来るようになる。これがとにかく大事なのだと気づくのに、結構時間がかかった。
でも、おかげで少しはちゃんと人に頼れるようになったし、最後の方には英語で話せる友達も作れるようになった。
◎ ◎
そして、最後に勉強。
英語は勉強はして来たはずだけど、授業には全くついていけない。
専門的な知識も言語の力も足りない。
そんな現実を思い知った。
ちなみに日本人の留学生も多い所だったけど、なんだか頼ってしまいそうで最初は距離を置いていた。
毎日図書館に通って、授業の内容を理解する勉強を日本語と英語でひたすら続ける。
家に帰ったら好きな海外ドラマをひたすら見る。
日本語でも英語でも当たれるものは何でも当たる。効率性の前に、そもそも泥臭く勉強する必要があった。
どうしようも無い力不足と、そこを埋めるための時間。
毎日向き合うのは辛かったけど、振り返った時その時間は無駄じゃ無かったと思える。
◎ ◎
そんなこんなで、冒頭の涙なのだ。
とにかく10代最後の年は、異国の地でとんでもない挫折感を味わうことになった。
でもそれが今の私を作ってると思うと何だか愛おしい時間だったとも思う。
たくさんの挑戦とたくさんの出会い。
1年が経つ頃には大きく成長させてくれたこの街が大好きになった。
決して他の人の様にキラキラしたものじゃなかったけど、それでも私にとっては大事なゼロからイチを作った記憶。
19歳の私にしては頑張ったんじゃないかな。
でも、もっと社会を知った今なら、違うアプローチができるかもしれない。
だからリベンジしたい。
やっぱりいつか大好きなあの街に帰ってみるんだ。