あの子のなにかがしっくりこない。
ある友達と一緒にいる時、なぜかどうもしっくりこないことが多い。歯車が微妙に噛み合わない。ピースがぴったり合わないむずがゆさ。
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私は、仲の良い友達と一緒にいる時は、いつも「しっくり」という感覚がある。言葉以上に通じ合っていて、細かいひだまでが重なり合っている感じ。「わかる!」の最上級を肌で感じる。
例えば、隣で歩いていると注目しているものが一緒だったり、同じことを考えていたり。そういう、まるで脳が一瞬同期しているような気持ちよさがある。
だけど、その子とはそういうものがない。なんとなく、一緒にいると物理的な視界が狭くなってきて居心地が悪い。たぶん、私が私らしくいられていない。一応彼女と私は友達で、結構な付き合いになるのに、なんでそんな風に思ってしまうのだろう。
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「嫌いな人は、実は自分に似ている」とよく聞く。
なんか合わないな〜というのは、実は似すぎているからなのかな?と最近思うようになった。彼女はマイペースで、気分屋で、話をあまり聞いてくれない。私が話していても、気づけば会話は彼女の主導権に逆戻り。会った後、なぜだかどっと疲れが押し寄せる。分かり合えた感じがしない。同期した癒しがない。
そういうムムッと思うところが実は自分と似ていて、鏡写し的に感じているのかもしれない。潜在的な自己嫌悪を彼女に投影して、合わないなと感じているだけじゃないんだろうか。
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もう一つ、私の心をモヤモヤとさせるのは嫉妬心によるかもしれない。甘え上手で、人を頼るのが得意なあの子。一方私はなかなか人と打ち解けられなくて、そう簡単にもたれかかることができない。かわいげのある彼女の姿を見て、自分にないものを余計に羨ましく感じているのかも、と考えてみる。
ぐるぐる思いを巡らしていたころ、彼女が私にこんな話をしてきたことがあった。「ななころびちゃんばっかり褒められていいな。私はぜんぜん褒めてもらえないもん。羨ましいな」
正面から、嫉妬心を隠さずにそんなことを口にするもんだから、面食らってしまった。
彼女が私のことをどう思っているのか全然知らなかった。私が嫉妬してしまうように、彼女も嫉妬することがあるんだ。そんなこと、1mmも頭に浮かんだことがなかった。
でも、そんな素直さも羨ましい。私はだれかにこんな気持ちを明かすことはできない。いいな、羨ましいな、なんてどストレートに言えっこない。
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結局のところ、「しっくりこない」というのは、「彼女といる時の私のことを、私があまり好きになれない」ということだと思う。いいところも知ってるし、助けてくれたこともたくさんある。でもしょうがない。好きとか嫌いとかって努力でどうにかなるものじゃない。と思っている。
別に彼女のことを嫌いなわけじゃないけど、なんかしっくりこない。付き合いを辞めるという選択肢もあるかもしれないけどそうはしたくない。彼女へのモヤモヤは私自身の姿をじっくりと見つめられる鏡だと思って、向き合っていきたい。