私のこれまでの人生の中で、秋にしたいちばん大きな決断、思い出。それは高校2年生の秋に決断した留学だろうか。
小中高と、地元の公立学校に通ってきた。特に離れた学校に行きたい理由も無かったし、私立に行く目的も無かった。
小中学校ではそれなりに友人もいて、楽しい学校生活を送っていた。高校も当たり前のように、地元の自称進学校に進んだ。金銭的にも親孝行だと思うし、それまでの過程にそれほど不満は無かった。
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ただ、高校生活が始まると、仲のいい友人は他校へ、知らない中学校から来る子も増えた。一緒に行動するグループはいても、私のいたグループは奇数で、ペアになる時には、いつもハミ出していたのは私だった。
別にハブにされているとかではなく、特に仲のいい2人になる時に、余るのは私だった。他のグループの子とも仲良くなったし、個別で遊ぶこともあった。それでも、学校のグループは別。私が特別仲良しというわけでもなかった。
反抗期も重なって、家ではいつも不機嫌だった気がする。中学の友人が、他校で楽しそうにしているのが羨ましかった。
高校でも続けようと決めていた部活も、男子は沢山いるのに、女子は少なかった。私の学年に限っては、私1人でスタートした。楽しい瞬間こそあれど、それらはどれも一瞬で。
ずっと居心地の悪さを感じていた。私の居場所はここじゃない気がする、と。
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そんな中、高校2年生になって受験勉強のために通い始めた英語教室で、夏休みにある留学団体の交流イベントに誘われたのだった。これが私の人生の転機になるなんて、この時は思ってもみなかった。
留学なんて、頭のいい人、キラキラした、向上心のあるような人が行くもの。私には無縁だと思っていた。
知り合いもいない交流イベントに参加すると、国籍も性別も年齢もバラバラの人が集まっていた。凄く、輝いて見えた。
そして母の後押しもあり、留学に行こうと決めた。
夏休みが終わり、新学期の秋。担任と校長先生に、留学の選考を受けたいと話した。私の通っていた高校では、短期の交換留学制度はあっても、過去に長期で、そして外部の留学団体を通して留学をした学生はいなかったらしく、私が初めてだった。その状況に少し誇らしさを感じた。
それにもかかわらず、先生達はとても精力的に動いてくれて、私は高校に来て初めて、良い先生に恵まれていたのだと感じた(それまでは不満ばかり感じていたけれど)。
選考もトントン拍子で進んだ。正直、国はどこでも良かった。どこでも良いから、ここから飛び出したくて。
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留学先が決まり、出発は次の4月。たったの数ヶ月で、私の人生のステージは変わった。留学生活は、何もかもが新鮮で、難しくて、知らないことで溢れていた。
理解できない、分かり合えないことも山ほどあったけど、楽しかった。留学して、何か特別なスキルや技術を持ち帰れたわけでもない。それでも私には十分。
たった齢17歳そこらでの、たったの1年間。
留学経験が今の仕事や生活に活かせているかと聞かれたら、正直分からない。
でも、留学のおかげで、知らなかった世界の広さや、身近でサポートしてくれる存在、人との距離感など、色々と学びがあった。
留学していなかったら、国際系学科のある大学にも進学していなかっただろう。その大学に行っていなかったから、今も仲良くしている友人に出会うこともなかった。
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そして何より、そこだけが自分の居場所だと思わなくて良いと知った。
私は何か見えない壁に囲まれて、そこで自分の居場所を見つけなくてはいけないような、耐えなければいけないような気がしていた。でも飛び出したっていいんだ。
居場所は、決してそこだけじゃない。自分で見つけに行ったって良い。
高校2年生の新学期。それは私の新しい人生が始まった秋。初めて、自分で大きな決断をした、秋。