3月半ば、部署異動の内示を言い渡された。
異動先は全く希望していなかった、むしろ行きたくないと言っていた部署だった。
眼の前が真っ暗になった。課長の話を聞きながらショックで涙が流れた。
出張先で電話で内示を受けたため、課長には泣き顔を見られていないことが、せめてもの救いだ。

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異動先はどちらかというと、のんびりした部署で、この3年間バリバリ働いてきた身としては、引き続きバリバリ働ける部署で頑張りたいと思っていた。
行きたい部署は伝えていたけれども、叶わなかったということは、どのチームからもいらないと言われてるような気がした。
新しい部署では何を求められているのか。早く会社から去ってほしいのか。
この1年は自由に仕事ができた。忙しいなかでも、精神的には追い詰められていない日々を過ごすことができた。この異動は自由にやりすぎた罰なのか。
色んな想いが頭を駆け巡った。

同期の中で、課長補佐に任命された人がいる。確かに彼は人望が厚く、真面目で仕事熱心だ。それなのに私は明らかに足踏みをしている。そう認識したとたん、心がズタズタになった。
結婚もしていなくて、子供のいない自分が仕事すらできなくてどうするのだ。仕事が自分のなかで、大きなアマウントを占めていることに気付かされた。同時に上を目指したい、出世したいと思っていたのだ。希望しない部署で、何を目標に頑張ればいいのか。

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内示を言い渡されてから、苦しくて苦しくてしょうがなかった。こんな自分をさらけ出したくなかったが、恥をしのんで先輩に相談した。異動を18回経験した大先輩に言わせると、異動があるごとに、異動の意味と時期を考えるのは無意味だという。
目の前の仕事を精一杯やることが大切だそうだ。そのうちに道が開ける。そう言ってくれた先輩の言葉に、背中を押された気持ちになった。

内示を受けた時には絶対に立ち直れないと思っていたが、それから1週間が経ち、ようやく現実を受け入れることができた。自分の心を見つめ直すと、これから携わる仕事は苦手意識を感じている分野であり、遅かれ早かれ携わなければならなかった。
そうであれば早いうちに経験する方が良かったのだと思えるようになった。
新しく上司になる人は、皆が口を揃えて良い人というし1つ上の先輩も同じチームにいることがわかり、人間関係での心配事は軽減された。
そして、今までいたチームの人たちが本当に何も関わりがなくなってしまうかというとそうではなく、飲み会に呼んでくれたり、イベントがある際も声をかけてくれたりするという。相談できる人がいるのは心強い。

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4月1日から新体制が始まる。
新しい業務には苦労がつきものだ。 前回の異動の時も不安だらけであったが、3年後には業務を変わりたくないと思えるほど充実した時間を過ごすことができた。
今は不安を抱えているが、自分の殻に閉じこもらず、明るい気持ちで構えて、新しい仕事を精一杯やりきりたいと思う。前回の異動のときよりも前向きな気持ちでいられるのは、これまで築いたキャリアの経験から来る自信と、その中で出会った人との関係があるからだ。

そして次の異動では自分のやりたい仕事に就けるよう、4月から始まる新しい業務で目の前の仕事を精一杯行いたい。 きっと成し遂げたことの1つ1つが、私の引き出しを増やしてくれるはずだ。