千葉県に住む私にとって、熊本は遥か遠くの地。それでも熊本という地には故郷のような温かさがあった。
きっかけは好きなアーティストのライブだった。熊本出身の彼女がツアーで故郷に行くことになり、私は熊本行きの新幹線のチケットを買った。ちなみに飛行機にしなかったのは、ただ怖いという理由だ。
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新幹線での旅は丸半日かかった。移動疲れの私を出迎えたのは、くまモンだった。どこを見てもくまモン、くまモン、くまモン。元々大好きなキャラクターだったので、早くも駅で足止めをくらい、写真を撮りまくる。
次に待ち受けていたのは、昭和、いや大正で時が止まったかのような、レトロな路面電車。千葉に路面電車の文化は無いので、一人大興奮。一番前まで行って、またもや写真を撮りまくる。
小腹が空いたのでコンビニに立ち寄ると、レジ横にはなんと大好きな黒糖ドーナツ棒が。黒糖ドーナツ棒とはその名の通り棒状の小さなドーナツで、黒糖が使われている、熊本名物のお菓子だ。千葉ではなかなかお目にかかれず、時々姉が宅配販売で買ってきてくれる。それが熊本ではごく当たり前に、一個単位でレジ横に並んでいる。思わず会計に追加してしまった。
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ライブが終わった後は、熊本名物の馬刺しを食べに、あらかじめ調べていた店に向かう。馬刺しユッケ丼はなんとも格別だった。
翌日はモーニングを食べに、ホテル近くの喫茶店へ。常連客がマスターと談笑している、アットホームな空気。その空気につられて思わず会計時に「私、関東から来たんです」と声をかけていた。おすすめのお土産を訊ねると、常連客の皆さんも参加してあれやこれやと教えてくださる。東京の人だと思われてしまったのは、まあ誤差の範囲内だから良しとしよう。
続いて向かうはくまモンスクエア。くまモン好きの私はずっとずっと行きたかった場所だ。くまモンと一緒に写真を撮ろうと右往左往していると、年配の女性の方が声をかけてくださった。両手でしっかりくまモンに抱きつく私は、目をキラキラ輝かせていた。
くまモンスクエアで購入したポストカードは、祖父母に送ることにした。九州出身の二人はきっと喜んでくれるだろうと思いながら、熊本駅前のくまモンポストに投函した。
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お土産を両手に抱えて、昼の新幹線に乗り込んだ。もちろん駅のくまモンの写真を撮ることも忘れない。
千葉に帰ってきてからも、辛子蓮根の辛さ、黒糖ドーナツ棒の甘さを感じるたびに、熊本を思い出す。帰ってから冷静に買ったお土産たちを見ると、調子に乗って買いすぎたような気がしてきたが、それも旅、もとい熊本の魔法。
わずか一泊二日、滞在時間でいうと20時間にも満たない。そんな少しの時間で、熊本は私の心をがっちり掴んだ。
熊本出身のアーティストをはじめ、路面電車の運転手さん、各地の店員さん、くまモンスクエアの女性、沢山の熊本の方の温かさに触れた、そんな二日間だった。
まだまだ熊本の知らないところは沢山ある。また行きたいという願いも含めて、私は熊本が好きだ。