昨年の11月12日、結婚した。
はー、やっと名字が変わるんだなぁと思った。名字にはいろいろと苦労させられた。
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というのも、わたしの親はわたしが10歳の頃に離婚し、その後別の親と再婚している。わたしは父の戸籍に入ったままだったが親権は母となった。そのため同居の母と名字が異なった。また、母が再婚した後に生まれた弟とも名字が違う。
親と名字が違うことはとてもコンプレックスだった。家の表札を見た友達から、「あれ?」という顔をされた。歳の離れた弟には姉と名字が違うことをどう説明するのだろう、と勝手に心配した。
わたしは親とも弟とも仲良く暮らしていたが、名字が違うだけで「何か訳ありなんだな」と他人から思われるのが嫌だった。まあ確かに世間から見れば訳ありなのかもしれないが、わたしが原因ではなくて巻き込まれただけなのにな、決めつけないでほしいな、と思っていた。
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結婚するとなった時、夫と「名字はどうするか?」という話になった。全く悩むことなく、「わたしが名字を変える!」と伝えた。夫と同じ名字になることで、今まで抱えていたコンプレックスは解消されるからだ。親と名字が違うことも結婚したから、と言える。嬉しいと思った。
しかし、そんな単純に解放されるものではなかった。
今年の4月、結婚式をすることになった。わたしは当たり前のように育ててくれた母と、再婚した父を呼ぶつもりだった。しかし、母は「いやわたしは名字が違うからいけない」といった。
名字でそんなに縛られるものなのかと衝撃だった。めんどくさと思った。確かに結婚式は新郎新婦の名字に「家」をつけて、呼ばれることが多い。結局、それぞれの親を説得して、母が参加することとなった。式場には「〇〇家」という呼び方はいろいろとチグハグになるのでやめてほしいとお願いした。
次にぶち当たったのが席次表である。夫は席次表を作りたいと言ったが、わたしは作りたくなかった。それは親と名字が違うことをバレてしまうからだ。話し合いの結果、配るのではなく掲示する形となった。実際、友人の中で名字が違うんだなという話になったらしい。やだなぁと思ったが仕方がない。
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新しい名字が気に入っているのか?と言われれば、そうではない。旧姓の方が爽やかな名前でとても気に入っていた。結婚してから名字が重々しく名前がふわっとしていてバランスの悪い名前になってしまった。手続きもとても面倒くさかったし、もし、親のゴタゴタがなければ「名字を変えたい!」と言わなかったかもしれない。
夫婦別姓という話が出ている。個人的には正直、別姓に関してはどちらでも良い。ただ一つ言いたいのは、選択肢を増やせば良いのにと思う。
反対派の意見に、伝統を重んじるべきとか家族の絆が弱まる、とか言うものがあるが、視野が狭いのではないかと思うし、名字で苦労してない人間の意見としか思えずイライラする。そら親がずっと仲が良く幸せで最後まで一緒であれば良いし、私もそれを望んでいた。しかし、イレギュラーなことが起こって名字のせいで生きづらくなった人間もいる。そこまで想像力を膨らまして欲しいと思う。
また、離婚した父の家系はわたしも妹も女、いとこも女である。そのため仮に全員が結婚し、伝統の通り名字が変わった場合、その「家」は消滅する。むしろ、別姓のほうが「家」の名前は残るのではないかと思う。また、家族の絆や一体感は名字どうこうの話ではなく、気持ちの問題だと思う。
私は名字で生きづらい人生を送った。そんな人の意見を吸いあげてほしいし、少しでも気持ちが楽になる選択肢が増えるといいなと思う。