忘れもしない社会人1年目の冬。ボッフリと雪の壁に突き刺さった私の車

私は、冬が嫌いだ。
雪国育ちで、真冬に産まれているけれど、冬が嫌いだ。寒いのだって嫌だ。
もっと言うと、雪が嫌いなんだよ。
もっともっと言うと、雪道の運転がダイッキライなんだよ!!!!
忘れもしない。
あれは社会人1年目の冬。
明日から冬休みに突入するという日だった。
仕事を終え、ルンルンで帰途についていた。
家では、家族がカニ鍋を準備して待っている。
脇目もふらず、家を目指していた。
とはいえ、事情があって私の通勤時間は車で片道2時間。長旅だった。
しかもその日はあいにくの大雪。
昨日までも雪模様で、道路は溶け切らない雪がまた凍り、テッカテカのツルンツルンだった。
あの感覚は、イヤだね。
ハンドルがきかない、もわんとした感覚。
タイヤが道路を噛んでない、ぬんっとした感覚。
スプーンでパスタ食べるみたいな。
ときおり悲鳴をあげながら、カニ鍋に向かって突き進んでいた。
途中で、カーブの激しい山道を通る。
事件はそんな山道で起きた。
右カーブ、左カーブ、次はゆるめの右カーブ……。
毎日通っている道だから、慣れたものだった。
次は少しキツめの左カーブ。そんなとき。
ああ、とまんねーや!ハハ!
「スプーンでパスタ」度合いがマックスになってしまった。
ハンドルもきかない。見えるのは対向車。
このままいけば雪の壁。
でもおそらくブレーキをきつめに踏めば右側に動く。踏むか?どうする?
あーやばいやばいすべるすべる、とまらん。
踏むか?踏むか?
否。
ボッフリと私は雪の壁に突き刺さってみた。
幸い、大雪のおかげでガードレールや崖まで到達することはなく、車も私も無傷だった。
わお。こわすぎ。
そこから、対向車の通過や後続車がいないことを確かめた上で、バックで車道に出て、切り返しを行い、もとの進行方向へ向かって走り出す。何事もなかったかのように。
壁を選んだときから、私の冷静度合いは半端じゃなかった。
普段からテンパりやさんの私にしては、とっても頑張った。
なんだか、壁に突っ込んでいる自分を俯瞰して見ているもう一人の自分がいたような感覚だった。
「人を巻き込むよりは」
この意識が強く働いた。
私の雪の壁突き刺さり事件は、毎年雪の季節になると欠かせない話題となった。
もう5年も前の話になってしまったが、未だに思い出すと寒気がするし、冬は怖くてその道を通ることができない。
私の住むところは、冬が長い。雪もドッサリ降る。
私の目下の働く目的は「沖縄に別荘を買う」である。冬は仕事をせず沖縄に避難していたい。
ニュースでは今年は雪が多い予想だと言っていた。
そんなニュースからは目を背け、耳をふさぎながら、今日も私はトロトロと後ろに迷惑をかけながら冬道を車で走る。
雪さえなければなぁ。
申し訳ないけれど、雪とはわかりあえない気がする。
誕生日とクリスマスがなかったら、本当に冬は地獄だよ。サンタさん、寒いのは我慢するから雪は降らせないで。お願いします。
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