小学生の頃、クリスマスが近づいてくると、クラス中が「サンタさんはいるのか」という話題で持ち切りだった。
高学年ともなると、様々な意見がある。
「サンタさんはいる」
という子。
「いない」
という子。はたまた、
「去年のクリスマスイブに、親がこっそりプレゼントを部屋に置くのを見た」
という、衝撃の告白をする子もいた。それぞれの子どもが抱える事情も複雑だ。
そんな年頃になっても、クリスマスが大好きで、サンタさんを信じていた私。それは、家族で過ごす時間が楽しかったからだと思う。

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毎年この日になると、祖父母の家で、家族全員で食事をした。
母のお手製、モッツァレラチーズの入ったサラダ。焼きたてのバゲット。デパートで買ったとびきり大きなチキンは、ナイフで切るのも大変な代物だった。食後には、ブッシュドノエルが我が家の定番だ。
お腹いっぱいになった後は、お宝を探して家中を走り回る。
「あった」
薄暗い部屋の隅に、プレゼントの箱と、お菓子の入ったブーツ。そして、大事なものがもうひとつ。
「わぁ、サンタさんからのお手紙だ」
宛名のところには、私の名前。赤い封筒を開けると、中には、クリスマスツリーの描かれた大きなカードと、飾り用のかわいらしいシールが入っている。
「素敵なクリスマスになりますように。カードにシールを貼って、あなただけのツリーを完成させてね」
私たちきょうだいは、わいわいしながら、それぞれのカードにシールで飾りをつける(余ったシールを大切に取っておいて、学校で使うノートなどに貼るのも楽しみだった)。そんな様子を、両親や祖父母も、ニコニコしながら眺めている。そうして、12月25日の夜は、にぎやかに更けていくのだった。

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しかし、私には、ひとつ疑問があった。
「サンタさんって、どこからお手紙をくれるんだろう」
クリスマスが大好きで、「サンタさんはいる」説を信じて疑わない私だが、それだけは長年わからないままだった。

最近、家族と話していて、ふとそのことを思い出した。
調べてみたところ、「広尾サンタランド」というところから届くものだとわかった。つまり、毎年両親が、私たちきょうだいのために申し込んで、用意してくれていたものだったのだ。
なぜ、今まで知らなかったのだろうか。もっと早く、「サンタさんはいるのか問題」が出てきた頃に気づいてもよさそうなものなのに。
そして、大人たちはなぜ誰も本当のことを言わなかったのだろうか。

私は考えた。子どもの私がクリスマスを楽しんでいたように、両親も、私たちきょうだいの喜ぶ姿を通して、ひとときの夢を見ていたのかもしれない。クリスマスは、家族全員にとって、楽しめる特別な時間なのだ。

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そして、その思いは今でも変わらない。毎年この時期になると、家を出た弟が帰省してきて、一緒に時間を過ごす。

料理はもちろん、母のお手製サラダに、焼きたてのパン(最近は、チーズバタールがお気に入り)。デパートで、チキンとホールケーキも買ってきて、家族4人でテーブルを囲む。
お互いの生活や好きなこと、仕事などの話をしながら食事をしていると、知らない世界を覗いているような気分になり、時が経ったことを感じる。
食事の後は、プレゼントを交換する。新しいバッグや、いい香りのハンドクリームなど、ささやかだけれど、心のこもった贈り物だ。

それぞれが、それぞれの場所で頑張っていることを称え合う。私たちも大人になったのだ。誰もが、大切な誰かを思えば、サンタさんになれる。クリスマスには、そんな夢や楽しみ方もあると気づいた。
今年は、どんなケーキにしようかしら。プレゼントも考えなくては。またひとつ、思い出が増えそうだ。