「一緒に頑張る」

その言葉がどれだけ心強いのか。ということを愛を通して学んだ。
一緒に頑張ると言っても言葉だけではなく、行動し、支え合い、すれ違い、ぶつかったとしても、それでも一緒に乗り越えるということ。
そして、2人で頑張っているから、一緒に頑張ってくれる人のために、自分ももっと頑張らないといけないと奮い立たせること。

それが、「一緒に頑張る」ということ。

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私が、20歳のとき。
ある病気を発症した。
私には、絶対縁がないと思っていたその病気は、たったの数日間で身体的・精神的に私の体を蝕んでいった。

それがわかってからは、辛く苦しい日々。
誕生日にはケーキを食べれることはなく、行事や友達との外出は約束をしても、体調の関係で当日キャンセルを繰り返す日々。

大学の1年間、毎日一緒にいた友達も、大学で初めてできた友達も離れていき、友達の半数をなくした。
周りが旅行に行く中で、旅行にも行けず……。

成人式、袴は着られず、スーツで出席。
周りの女の子が、袴をお母さんと選んでいる姿を横目に見ながら、せっせと私のスーツの準備をする母を見ると胸が痛かった。

成人式当日も、同年代の子が袴を着て、友達と写真を撮ったり、お母さんと話しているのを見て、私は母に悲しい思いをさせたことを感じ泣きそうになった。
本来は私も袴で出席するはずだった。

「なぜ、自分が……」

その思いを感じない日はなかった。
体調が良くない日は、一日中家で過ごすことがほとんどだった。
もう、生きていくことさえ辛い日もあった。
このままなら。何も変わらないなら。
それならもう……。何度思ったかわからない。

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そんな生活のまま大学を卒業した。
卒業する頃には、少し落ち着いていたので就職はできた。
そこで社会人としての日々が始まった。
しかし、症状が少しずつ出るようになり正社員としての勤務は難しく、転職をした。
その後少し症状が落ち着くのを待ち、もう一度転職をした。

新しいところでも変わらない。
始業時間に行き、定時に帰る。
そんな生活だと思っていた。

しかし、一人の男性に出会った。
業務をする中で彼と話すことが多くなり、話せば話すほど、知りたくなって、段々彼が気になる存在になった。
何を考えているのか少し掴めない人だった。
でも、まっすぐで私にはないものや強さを持っている感じがした。
彼が笑うと嬉しい。褒められると嬉しい。一緒にいると楽しい。
もうずっと忘れていた気持ちを再び思い出していく感じだった。
でも、その先に進むことは望めなかった。

私と付き合うことでどんな思いをするかということは家族の姿を見て、わかっていたから。
だから、彼との先を考えたい。
でも、考えられない。ジレンマの日々だった。

ある時彼は私に告白してくれた。
「一緒にいたい」
私は少し迷った。
彼といるときの私は、元気なふりをした私。
でも、私は返事をしてしまった。
「一緒にいたい」と……。

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今思えばすごく失礼だけれど、付き合ってうまくいかなかったら仕方ない。
そんな思いだった。
でも、私は彼といる時間が好きで楽しかった。
いつの間にか偽っていた元気な私は彼といることで、本当の姿に変わってきた。
彼とは、病気の件で喧嘩をし、こんな思いをさせるなら……と思うことも多くあった。
でも、その話をするたび彼は言った。

「一緒に頑張る。楽しい時間だけを過ごすのでは無く、辛いときに一緒にいるのも大切だから」

そう言って頑張る彼の姿を見て、私も変わらないといけない。
このまま、現状維持ではなんの意味もない。
彼と過ごすために、隣で笑えるように頑張らないと。
そう決めて、諦めていた治療にもう一度真剣に取り組んだ。
一人でなら諦めそうな辛い治療も自然と頑張ることができた。
あまりの変化に主治医も驚くほどだった。

彼と頑張った時間は私の自信になっていった。
そして、彼と一年間頑張り、症状はほとんどなくなり良くなる傾向を維持できるようになった。

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愛が私を変えたこと。
それは、「半ば諦めていた私の人生」だった。

大げさかもしれない。
でも、私にとってこの出会いはそれほどだった。
彼と会い、誰かと一緒に頑張ることで気付いたこと。

誰かが一緒に頑張ってくれるから、しんどいときもやめたくなるときもそれでも頑張れる。
自分一人の頑張りではないと思うから。
その人と一緒に頑張りたいと思えるから。

彼との出会いは私の人生で大切な瞬間だった。