最近、友だちから「嫌知らず」という言葉があると聞いた。

「彼氏が、どんなに嫌と伝えてもやめてくれないんだよね。いつも『俺は別に平気』って。これって『嫌知らず』っていうらしいよ」

嫌知らずとは、「嫌だからやめてほしい」と伝えても、嫌がっている気持ちが伝わらず「自分は大丈夫だから」などと言って、行為をやめてくれないことをいうらしい。
この話を聞いたとき、過去に付き合っていたモラハラ元彼に、どんなに伝えてもやめてもらえなかった“あること”を思い出した。

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まだわたしが20歳の小娘だった頃。大学の交換留学先で再会を果たした、高校の同級生と海外で恋に落ちるという、なんともロマンチックな恋の始まりだった。
日本に帰ってからも、家が近いわたしたちは頻繁にデートをした。大学は違えど、同じバイト先で働き、一緒の年に就活をし、新卒で就職したタイミングで同棲をはじめた。関東の片田舎から、東京の板橋にふたりで2DKを借りた。数年働いたら結婚かな……なんて、将来のことも話すくらいには順風満帆だったと思う。

そんな元彼にされて、どうしても嫌だったことがあった。それは、わたしのお尻をところかまわず触ってくること。エスカレーターに乗っているとき、座っているとき……腰に手を回してはさり気なく、時には堂々と触ってきた。

正直、これを書いてる今、思い出しただけでも気持ちが悪くなってくる。

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わたしは、外で性的な“絡み”をすることが苦手だった。外でチュッチュする場面をよく見かける海外に住んでいた経験があろうと、わたしは“そういうこと”は他人に見せるのが恥ずかしいと思っている。
付き合っているとき、ボディタッチが多いなあと感じることはあったものの、若かったわたしはそれが「愛情表現」だと自分を納得させていた。「〇〇のお尻、好きだよ」なんて、本人は褒め言葉だろうけど、触っていい免罪符にしてほしくないとつねづね思っていた。

それでも、許可なくわたしの身体、それもプライベートゾーンを触ってくるたびに気持ち悪さが増して、ある時ついに元彼に伝えた。

「外でお尻を触られるの、あんまり好きじゃないかも……」

そう、勇気をふりしぼって伝えたわたしに、元恋人から返ってきた言葉。

「俺が触りたいからいいじゃん。これが愛情表現なんだよ」

それから何度伝えても、お別れをするまで、元彼はそれをやめなかった。
そんな行為が、恋人同士でもセクシャルハラスメントにあたること、そしてこれが「嫌知らず」なんだと知ったのは、それから10年も経ってアラサーになった最近だった。

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彼氏彼女でも、夫婦でも、相手のプライベートゾーンを同意なく触る場合は、ハラスメントにあたる。性的な行為を許容することは、ひどい場合は性的DVにもなる。なにより、わたしの身体はわたしのものだ。急にプライベートゾーンを触られるのは不快だし、それを外でされるのがどんなに嫌なことか。

元彼とお別れしてからもう7、8年が経とうとしている。恋人間でも「嫌」と言えばやめてもらえることも、相手の言いなりにならなくても愛してもらえることも知った。
今でもモラハラやセクハラをする人たちの頭の中がわからない。「嫌よ嫌よも好きのうち」とでも思っているのか、はたまた、こちらの意見や感情は一切耳に入っていないのか。「嫌知らず」という言葉が浸透しても、彼ら・彼女らには念仏なのだろうか。

結局、嫌なことは嫌と言うしかないし、「嫌知らず」でつらい思いをするなら、離れる選択をするしかない。我慢せずに、わたしが伝えつづけていくしかないんだ。
今だから言える。

「わたしの身体はわたしのものだ。嫌だから触らないで」