いつもは飛ばし聞きするエリアの天気予報に、耳を澄ませる。旅行前にではなく、旅行後に。それが、旅の良し悪しのバロメーターだと私は思う。

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旅が新しい景色を教えてくれるのは、ある意味当然のことだ。普段は起きる時間に、まだホテルで寝ていたり、普段は通勤している時間に、目覚めたばかりの町を散策したり。旅は、日々のルーティンを心地よく崩しながら、新しい世界を見せてくれる。

でも、旅行後も、自分の世界が広がっていると感じることがある。それが、天気予報を聞いている時なのだ。

自分が昨日まで、あるいは、数日前までいたエリアの天気予報に耳を傾け、旅先の景色や人を思い出す。雨ならば、「あの辺りは寒くなりそうだな、あの時優しくしてくれた店員さんは大丈夫かな」と心配し、晴れならば、「あの日は見られなかった山々が、あの窓から、今日は綺麗に見えているはず」と旅先の景色を頭の中でアップデートする。

旅行中、非日常に身を置きながらも日常の自分を思い出すのと、ちょうど逆のことが起きる。体は日常に戻っても、心が、まだ旅先を向いているのだ。

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旅行の思い出が深いほど、天気予報に耳を澄ませる頻度は高くなる。いい旅をしたと思うと同時に、「旅はまだ終わっていない」感覚に私は満たされる。日常が、今なお旅先と繋がっているのを、じんわりと感じる。