ゴスロリを着てパリに降り立ったのは2019年のこと。

この年、私は哲学科に入った。デカルトが好きだからである。
そんな私は、大学入学を機に、彼の生きたパリに行くことに決めた。

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ゴスロリを着ていく意味は普段着だからである。パリに普段着を着て行って何の問題があろう。

パリは素敵な町であった。古き良き西洋建築が残り、どこを撮っても様になる。カフェのお菓子は見た目も味もすこぶる良い。毎日同じカフェに行くため、店員とも仲良くなり、最終日には「君の洋服いいね!」と褒めてもらえるようになった。

さて、そんなパリだが、困ったことが一つある。天気雨が多いのだ。
ある時、私は雨宿りのために教会に入った。次の目的地を決めるために、現在地をスマホで調べる。すると、驚くべきことが分かった。その教会の名前はサンジェルマンデプレ教会、なんとデカルトの眠る教会なのだという。広い教会の中を探してみると、その教会に眠っている人の名前の中にデカルトの名前があった。

きっちりスケジュールを組んで目的地をまわる旅行もいい。が、偶然に身を任せて行ってみる旅行もまた乙なものである。計画して手に入れる喜びと突然手に入る喜びはまた別だ。