一昨年の冬、初めてウォン・カーウァイ監督の映画を観た。彼の映画との出逢いは、とある映画ポスター専門店で見つけた『花様年華』の真っ赤なポスターだった。華奢なマギー・チャンのチャイナドレスの着こなしに目が奪われた。母に聞くと、昔『恋する惑星』が流行っていたという。私が生まれる数年前の作品である。

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レストア版がちょうど公開されたとのことで渋谷の小さな映画館へ足を運んだ。広東語の響きや、美を最大限に追求した恋愛描写、世界各国の音楽を寄せ集めたBGMが醸し出す、ウォン・カーウァイ作品独自のエキゾチックさ。古き良き時代への憧れもあったかもしれない。それらに引き付けられて連日映画館に通い詰めた。映画に出てくる音楽を調べてはお気に入りに追加し、今や私のプレイリストは多国籍・多世代である。

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ほんの30年ほど前までイギリス統治下にあった香港。中華文化を残しながらも、西欧世界へのアジアの窓口としてのイメージがある。ウォン・カーウァイ作品も、香港を軸として、様々な時代や文化へと私を連れだしてくれる。
最近では、日本の地方都市からも香港への直行便が出始めている。交通が便利になった今、香港は、私が最も訪れたい場所だ。